第11回 東南アジアにおける人事: その1 1 シンガポールの人口動向
先般日本に出張する機会がありました。
パソコンのスケジュール表に頼りすぎていたのか、シンガポール時間と日本時間を間違え午前11 時の約束にも関わらず堂々と昼の12 時に訪問をしてしまいました。
また期中に大型台風18号が日本を縦断。東京近郊の電車がかなり遅れ、これまた約束の時間に遅れてしまいました。
シンガポールの時間のかからない移動に慣れてしまったのか、日本では終始スケジュールに押される感じがしました。
期中、弊社と提携する人事コンサルティング会社の代表とお話しをしました。
東南アジアに長年居住している筆者から見れば東南アジアはごく身近な存在でありますが、これから進出を考えている中小企業はやはり少々及び腰というか「遠い存在」であるようです。情報がそれほど多くないとのことで、今後東南アジア進出を考えている中小企業向けに人事セミナーを開いて欲しいとの要請を頂きました。
現在、日本では社員の「心の病」いわゆる「うつ病」が増えているようで、当該コンサルティング会社の今の主な業務(企業からの相談事)は「うつ病」を発病した社員からの訴訟に対する企業の対処に関するもので、今や従業員が会社を相手取り堂々と訴える「モンスタースタッフ」が増えているとの状況説明をして頂きました。
やはり夜11 時近辺でも超満員の電車に揺られますと日本は労働分配がうまくいっていないのではないかと思いました。
さて、先般シンガポール首相府より最近の人口動向が発表されました。2014 年6月末時点の総人口は前年比1.3%増の5469,700 人でした。この1.3%増は過去10 年で最低の伸び率であり、背景としては政府がとにかく強引とも言える手法で外国人労働者規制を強め外国人の流入をコントロールした結果でしょう。
外国人は2.9%増の約160 万人で、07 年から08 年の15%から20%近くの急激な伸び率に比べると大幅に鈍化していることが分かります。永住権(PR)保持者は0.7%減の527,700 人で、前年の0.3%減に続いての2年連続のマイナスとなりPR取得を目指している人が多い中でさらに厳しくなっている現状です。
筆者の知人数人も現在PRを申請中ですが6カ月たってもまだ返事が来ていないとのこと。
認可基準は特に明確化していないものの、シンガポール人と結婚した人も簡単には下りない現状、外国人の取得はさらに狭き門となっています。PR保持者の人口が2年連続で減っているのは、PRを捨てて本国に帰る方が増えたか、国民への「グレードアップ」ですが、この数は約2万人ですので「国民化>流出」となっています。
少子化の中でPR保持者を国民化していく施策は変わらないと思われ、その下地となるPRの認可規制をいまだに行っておりますが、国民人口を維持していく上でPRの認可数もこれから徐々に増えていくことが考えられます。特にインドネシアやマレーシアの華人は自国ではマイナリティーに属するので華人がマジャリティーのシンガポールでの国籍を取得したい方々が数多くいます。
外国人の「数」は微増となりましたが、全体に占める「割合」は昨年と変わらず29%でした。この6:1:3の比率を維持していく事が当面続くと予想できます。
肝心の労働人口ですが、65 歳以上の割合が12.4%と毎年1%近く増えており、先般も触れましたが平均年齢が40.4歳となり、ついに日本と同様に40 歳を突破してしまいました。
1人の65 歳以上を支える労働人口(20~64 歳)の国民の数は1980 年の11.4 人に対し5.2 人と半分以下になっています。
シンガポールは「移民国家」ですが、他の東南アジアでは平均年齢がシンガポールの約3分の2と消費市場の成長機会は多いと言えます。人口構造が急激に変わる中で、どのように労働分配を行っていくかをシンガポールだけで考えるのではなく、東南アジア全域で捉える必要があります。
Daily NNA 2014年10月30日号より抜粋
コラム執筆者
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1966年東京生まれ。大学卒業後、小売・流通チェーン「ヤオハン」に就職。1993年より香港本社へ転勤後一貫して人事に携わる。同社清算後も大手人材紹介会社「パソナ」のタイ現地法人社長を務めるなど複数社で人事・経営に携わる。
2006年、タイ国立マヒドン大学経営大学院にて経営学修士取得後、シンガポールにグッドジョブクリエーションズを設立、2014年に同社売却。
2014年6月、シンガポールに、プロの人事集団「プログレスアジア・シンガポール」を設立。真に東南アジアでビジネスを展開する中小企業をサポートすることを使命に再び起業の道を歩む。
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