第105回:シンガポール人口統計から考えられること
先週シンガポール政府がSG BONIUSを発表しました。2018年度の予算が余ったため、その余剰分を国民に分配するというものです。
対象は21歳以上のシンガポール国民で、それぞれの年収に応じて分配されます。
年収が28,000ドル以下の場合、300ドル、100,000ドル以下の場合、200ドル、10001ドル以上の場合は100ドルと大判振る舞いをします。
シンガポールの友人とこの話をしたところ、増税前の「飴」と言っていましたが、まあもらえるものは嬉しいようです。
日本でも以前、地域振興券の名目でその地域で使える商品券を2万円ほどもらった記憶がありますが、15歳以上の子供がいる方が対象だったと記憶しております。
その際に差別感を感じる人もいましたが、目的は子育て支援でした。
シンガポールの場合は、全国民が対象とこれは人口が少ないからできることであって、世界を見てもこのよう早い施策はできるのもトップダウンで実行が早いからでしょう。
さて、人口といえば、シンガポールの統計局より最新の2018年度6月末時点での人口統計が発表されました。
総人口は563万8700人で前年同時期と比べ0.5%の微増です。
内訳を見ますと、シンガポール・シチズン(シンガポール国籍)は347万1900人で、1.0%の微増です。
目を引いたのは、シンガポール永住権保持者の減少です。
昨年は52万6600人でしたが、ことは52万2300人とマイナス4300人、率ですと-8%と初めてマイナスに転じました。(昨年までは0.4%のプラス)
PRが減っていく要因としては、新規発給を抑えていることが一番の理由だと思いますが、PRからシンガポール人と結婚し、シンガポールシチズンになられた方もいるかと思いますが、此方も審査は大変厳しく、簡単には「国民」になれません。
統計上は、シンガポール国民とPRを合わせた数が、シンガポール居住民とされており、その数は約400万人になります。
つまり総人口約564万人からこの数を引きますと、シンガポールには住んでいる「外国人」となります。
その率は年々増加しており、29%と全人口の約3割を占めます。
そのうちの約8割が、単純労働者いわゆるワークパーミット層で、メイドや建設現場で働くワーカーの人達です。
つまり今規制がどんどん厳しくなっているEPやSパスに関しては実は30万人ほどしかいません。
労働人口を見てみますと、20歳以下の人口はマイナス1.2%で21歳から64歳の生産性のある労働力人口は0.3%と微増です。
一方、64歳以上の人口は毎年6.0%ずつ増えており、少子高齢化が急激に進んでいることが分かります。
「雇用の中心はシンガポール人」と頑なにシンガポール政府は言っていますが、どんどん高齢化が進んでいく中で、いかに「外国人」」との融合が必要になってくるのではと思います。
2025年までに介護のメイド要員が大量に必要になってくるとの試算もあります。
恐らく、その数は増えていくことが予測されます。
初めて減少に転じたPRの人口につきましては、52万人を維持するものをこれ以上は増やさないポリシーで行くことが予測されます。
「シンガポール居民」だからSG BONUSはもらえると筆者を含めPR保持者は一瞬期待をもちましたが、「国民」ではなく「外国人」扱いでした。
その「外国人」の数を合わせると38%となります。PRに関しましては、時には動物の仲間、時には鳥の仲間と「コーモリ」のような状態がしばらく続くようです。
弊社斉藤連載中Daily NNA 2018年10月4日号「東南アジア人「財」羅針盤」より抜粋
コラム執筆者
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1966年東京生まれ。大学卒業後、小売・流通チェーン「ヤオハン」に就職。1993年より香港本社へ転勤後一貫して人事に携わる。同社清算後も大手人材紹介会社「パソナ」のタイ現地法人社長を務めるなど複数社で人事・経営に携わる。
2006年、タイ国立マヒドン大学経営大学院にて経営学修士取得後、シンガポールにグッドジョブクリエーションズを設立、2014年に同社売却。
2014年6月、シンガポールに、プロの人事集団「プログレスアジア・シンガポール」を設立。真に東南アジアでビジネスを展開する中小企業をサポートすることを使命に再び起業の道を歩む。
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