第108回:EPとSパスの認可件数増減の背景

先週11月12日にMOM(人材開発省)より2018年6月末時点での外国人労働者数の発表がありました。

英語ではForeign Workforce Numbersとなっています。

このWORKFORCEはWORKが仕事で、FORCEが力ということで「労働力」とも捉えることができます。

この場合は「労働者数」の意味合いとなります。

統計数字を見ますと、やはりいちばん目を引くのはEP(エンプロイメントパス)の減少です。

6ヶ月の間に3,300件減少しており、EPの新規案件認可減及び更新却下の影響が出ています。

卑近な例としては、私の知人の飲食業で日本人シェフを8,000ドルでEPを申請しましたが却下されました。

却下理由は一行のみ。

Not Qualified for taking EPのような文面で書かれており、「何が」不適格なのかは書いていません。

最近は「飲食業」と「美容院」のEP認可が鈍ってきており、理由としては、シンガポール人の美容師と料理人の仕事の機会を奪っているとの見解が出てきています。

8,000ドルあればなぜシンガポール人を2,3名雇用できないのか?という観点かもしれません。

とにかく今は給料だけ高く出せばEPが認可されるという状況ではなくなってきています。

一方、Sパスの認可数は右肩上がりで増えており、6ヶ月の間に5,300件増えています。

EPに関しましては、7月1日の新規性により、11名以上の従業員がいる企業の場合(それまでは26名以上)同じポジション同じ給料を14日間掲載しませんとそもそも申請すらできない状況になりました。

14日+申請期間で即シンガポール勤務決まっても、昨今の認可までの日数の長期化により、企業の人員計画にも影響が出ています。

同コラム103回でも述べましたが、「最初からSパスを申請する動き」は出てきています。

中評価大学卒業で関連職務経験10年以上の30代前半(独身もしくは単身赴任であることが必要ですが。。。)の社員がシンガポール赴任なるときにEPを申請すれば会社付与の住宅も給料に加算されることから、ほぼまちがいなくEPは認可されますが、14日間申請ができないことが一番の「阻害要因」となり、条件だけ満たしていれば確実に取得できるSパスを最初から申請する動きが確実に出てきています。

その結果が半年で5,300件(約3%)の増加につながっていると思います。

またOther Work Passesも6ヶ月の間に700件増えています。

これはまちがいなくLOCの認可件数です。

EPの代替要員として、DPホルダーの基本的には駐在員の配偶者を雇用する動きです。

弊社も数名のLOC社員がおります。

最近は無条件で取得できるLOCも認可までに10日から2週間ほどかかるようになり、例えば急な展示会の通訳をお願いしたい時に展示会開始日までに間に合わないケースも出てきています。

認可までの期間が長くなっている原因はわかりませんが、このLOCにも目を付けられ、何かしらの規制(事務職はシンガポール人雇用優先)が出てくるのではと危惧します。

JOBS BANKは突然名前が代わり、My Careers Future.sgに代わりました。

やはり前のJOBS BANKでは「骨髄バンク」みたいでイメージが悪いと判断したのかもしれません。

日系企業の求人案件も数は少ないですが見受けられます。しかしながら、求人内容はまさにジェネラリストである日本人駐在員案件であり、スペシャリストがメインであるシンガポール人とはマッチしません。

EPを取得するために、(一応)シンガポール人雇用に努力してみたが(残念ながら)見つかりませんでしたとなります。

弊社斉藤連載中Daily NNA 2018年11月22日号「東南アジア人「財」羅針盤」より抜粋

コラム執筆者

斉藤 秀樹
斉藤 秀樹プログレスアジア 代表取締役
1966年東京生まれ。大学卒業後、小売・流通チェーン「ヤオハン」に就職。1993年より香港本社へ転勤後一貫して人事に携わる。同社清算後も大手人材紹介会社「パソナ」のタイ現地法人社長を務めるなど複数社で人事・経営に携わる。
2006年、タイ国立マヒドン大学経営大学院にて経営学修士取得後、シンガポールにグッドジョブクリエーションズを設立、2014年に同社売却。
2014年6月、シンガポールに、プロの人事集団「プログレスアジア・シンガポール」を設立。真に東南アジアでビジネスを展開する中小企業をサポートすることを使命に再び起業の道を歩む。