第138回:「新型コロナウィルス」に関する人事の対応(その2)
新型コロナウィルス通称COVID-19は現在でも世界中で感染が広がっています。
アジアだけでなく、現在ではイタリアやイスラエルといった欧州、中東にも広がっています。
シンガポールでは水際対策が進んでおり新規感染者の大幅増には至ってはおらず、回復して既に退院している人も多いです。
死者がゼロというのも感染拡大を抑えるための徹底した対策と、早期発見、隔離を行っていることが大きな要因でしょう。
東南アジアで不思議なのはお隣のインドネシアでは死者はおろか、感染者もゼロが続いていることです。
各国がこの状況を疑っていますが、インドネシア保健省は「高温多湿で太陽光線を浴びているのでそれがウィルスを殺している」と説明し、科学的な根拠はあまり感じないものの、ゼロの記録は続いています。
2月7日に起こった「買い溜め騒動」が象徴しているように、ウィルスの感染拡大リスクよりも食料やトイレットペーパーがなくなってしまう物質面での恐怖、不安の方が増大していました。
自宅近所のスーパーマーケットでは、トイレットペーパーがこれでもかと言わんばかりに山積みになっています。
あの騒動はなんだったのかと思いますが、デマによるパニックはこれからも起こりそうです。
さて、シンガポール政府の徹底した対策の一つとして、過去14日以内に中国や韓国・大邱、慶尚北海清道部への渡航歴のある旅行者に対する一時滞在やトランジットの禁止措置があります。
こうした国・地域への渡航歴がある国民や永住権(PR)、労働ビザの保持者にも無条件で14日間隔離する措置を取っています。
さらに、過去14日以内に中国に渡航歴がある外国人労働者が入国する場合、シンガポール政府の事前認証を得ずにそのまま就労した場合、就労ビザの即日剥奪及び24時間以内の国外退去が言い渡されます。
また、就労を認めた企業も2年間の就労ビザ申請不可となる厳罰で臨んでいます。
摘発された「外国人」の中には「日本人」も含まれているとの「噂」もありましたが、特に感染の兆候はないので就労しても大丈夫だろうと日本的な根性論では通用しない一面もあります。
毎週のように摘発は続いており、人事としては中国出張から帰ってきた出張者には強制的に14日間自宅待機させる必要があります。
日本では、市中感染がどんどん広がり、観光従事者だけでなく、教育従事者や生徒への影響も懸念されており、感染拡大をいかに食い止めるかが重要なポイントとなってきています。
そのうちシンガポールでも日本人の入国制限を設けるかもしれません。
弊社では沖縄の学生7名をインターンで迎える予定でしたが、沖縄でも感染者が確認されたので、シンガポールに渡航するリスク回避の為、キャンセルになりました。
また、筆者の知人で電子部品を扱っている商社の現地採用社員が業績悪化により3月末での契約解除、いわゆる解雇を提示されました。
またイベントを扱っている広告代理店も事案キャンセルが相次ぎ、このまま続けば資金繰りが悪化し会社を閉鎖するしかないと危機感をあらわにしていました。
経済への影響は大きく、中国への依存が高い製造業だけでなく、観光業やイベント従事者など人を扱うビジネスを行っている企業は業績悪化が目に見えています。
シンガポール政府は、経営者に対して、雇用の維持を呼びかけています。
その政策の一環として、シンガポール国民と永住権保持者に対して3ヶ月分の給与額(最大3600Sドル)の8%を7月までに企業へ支給することを決定しました。
金額にしてみれば、最大額で1ヶ月あたり288Sドルの3ヶ月分で864Sドルになります。
この金額で業績悪化により解雇を防げるかどうかは微妙ですが、予算取りと実行が早いことは素晴らしいと思います。
また社員で発熱が認められた場合、5日間のMC傷病休暇を与えることも決まっており、逆にこの権利を利用して自宅療養を十分に取っている現地社員もおります。
シンガポール政府は日々さまざまな対策を取っています。
「知らなかった」では済まされないので人事担当者は随時チェックをし、全従業員に告知する必要があります。
弊社斉藤連載中Daily NNA 2020年2月13日号「東南アジア人「財」羅針盤」より抜粋
コラム執筆者
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1966年東京生まれ。大学卒業後、小売・流通チェーン「ヤオハン」に就職。1993年より香港本社へ転勤後一貫して人事に携わる。同社清算後も大手人材紹介会社「パソナ」のタイ現地法人社長を務めるなど複数社で人事・経営に携わる。
2006年、タイ国立マヒドン大学経営大学院にて経営学修士取得後、シンガポールにグッドジョブクリエーションズを設立、2014年に同社売却。
2014年6月、シンガポールに、プロの人事集団「プログレスアジア・シンガポール」を設立。真に東南アジアでビジネスを展開する中小企業をサポートすることを使命に再び起業の道を歩む。
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