第153回:日本に戻れない&シンガポールに入国できない

世間では米トランプ大統領の新型コロナウイルス感染が大きなニュースになっています。
米国人の「アンチ・マスク」は大統領の姿勢からも伺えます。

一方シンガポールでは街を見渡しても運動している人など以外は100%マスクをしています。
筆者も正直、マスクをするのがあまり好きではありませんが、既に生活習慣になっており自然につけるようになりました。

先日、MRTの中でマスクから鼻を出していたところ、すぐにMRTの職員が血相を変えて近づいて来て注意を受けました。

この注意に従いませんとMRTが発進しませんし、また交通警察に引き渡され罰金刑(初犯は300ドル)に課されます。

ここまで徹底していることもあり、最近の市中感染は多くて1日当たり2,3名、感染拡大が問題になった建設現場で働く人たちの宿舎いわゆるドミトリー内での感染もほぼ収束に向かい、シンガポール国内での感染者数は日に日に少なくなっています。

先般、日本の茂木外務大臣がシンガポールを訪問し、シンガポールのビビアン外務大臣と両国間の往来再開について話し合いました。
その結果まず短期出張者を対象とした「ビジネストラック」が設けられました。

滞在中の「活動計画書」の提出により、14日間の自宅等待機期間中も、行動範囲を限定した形でビジネス活動が可能となるスキームです。

ただし、その出張も重要かつ不可避な場合とあります。では、普通の会議が不可避な場合かというと、それは各企業の重要度により定義が難しいところです。

今のところ、このスキームを使っている人は筆者の周りでは聞いたことがありません。
短期出張のニーズもオンラインに慣れてきたこともあり、意識がかわってきたのかもしれません。

次に「レジデンストラック」が9月末に発表になると言われており、シンガポール在住日本人の間で、マレーシア人と同様に任意の場所(自宅)で7日間の隔離で済むのではとの大きな期待が膨らみました。

もしそうなれば、日本に3月以降いけなくなってしまった筆者も含め、運転免許証更新の為に行かなくてはならない友人など日本の空港で抗体検査を受けて陰性であれば日本で任意隔離をしてシンガポールに戻っても、7日間自宅待機で土日を挟めば水木金+月火水で仕事上も問題ないと「皮算用」していました。

運用開始の直前にようやく詳細が発表されましたが結果、なにも変わっていません。14日間のホテルでの強制隔離は続いていますし、隔離中の滞在費やPCR検査費用と合わせて2,200ドルを支払わなければなりません。

日本人の場合、宿泊施設は4スター以上のホテルに宿泊(隔離)できるようですが、外(廊下)には一切出られません。
シーツも14日分置いてあり自分で変える必要があります。

また新規で労働許可証の仮許可(IPA)を持っていても、シンガポールに入国する場合、ENTRY APPROVAL(入国許可証)を取得する必要があります。

何故かマレーシア人はすぐに下りるのですが、日本人の新規の駐在員は3週間前に応募しても「人数が多い為」との理由で却下されていました。
あらためて、ギリギリの30日前で申請をしたところ、ようやく認可されました。

IPAの有効期限が切れそうな場合も、14日間という十分な隔離期間をおいていませんと入国が認められません。
その場合、再度IPAを取得し直す等、期間を十分に置く必要があります。

以前のように自由で開かれたシンガポールの国境も閉ざされたままで、有名企業の日本人だからといっても、条件を満たしていないと入国が認められない現状が続いています。

「秋の味覚と温泉を堪能したい・・・」と願望だけが先走りします。

弊社斉藤連載中Daily NNA 2020年10月8日号「東南アジア人「財」羅針盤」より抜粋

コラム執筆者

斉藤 秀樹
斉藤 秀樹プログレスアジア 代表取締役
1966年東京生まれ。大学卒業後、小売・流通チェーン「ヤオハン」に就職。1993年より香港本社へ転勤後一貫して人事に携わる。同社清算後も大手人材紹介会社「パソナ」のタイ現地法人社長を務めるなど複数社で人事・経営に携わる。
2006年、タイ国立マヒドン大学経営大学院にて経営学修士取得後、シンガポールにグッドジョブクリエーションズを設立、2014年に同社売却。
2014年6月、シンガポールに、プロの人事集団「プログレスアジア・シンガポール」を設立。真に東南アジアでビジネスを展開する中小企業をサポートすることを使命に再び起業の道を歩む。