第155回:シンガポールへの入国制限緩和について
シンガポールは国際都市として成長してきましたが、新型コロナウィルスの感染拡大を受けて、国境閉鎖を余儀なくされています。
チャンギ国際空港は世界空港ランキングで常に上位に位置しており、また乗継便も多いことから、国際空港としてのハブでの役割を果たしてきました。
現在チャンギ空港の利用客数は前年同月比99%減となっています。
ある面なんとしても新型コロナの感染の輸入例を少なくして、国内感染を必死に防ごうとしている努力が伺えます。
ただ、このまま行くと、シンガポールの「片肺」を失うとオン運輸相が言っているように、チャンギ空港のハブとしての復活を国の最優先事項として積極的に進めていく必要があるともコメントしております。
日系企業を始め、シンガポールに進出している外資系企業の進出動機としては、国土が狭いため自宅から空港までが近く、東南アジア各国に2,3時間以内で出張ができるという「地の利」がありました。
その「地の利」がなくなってきたことで、シンガポールに駐在する意味がなくなってきています。
その結果、飲食店以外でも撤退事例も増えていています。
弊社の顧客でもありますサービス関連業は、ほとんどリモートで商談ができるシステムが出来上がったとのことで、来年3月に完全撤退することが決まりました。
既に2名の社員は残念ながら早期に解雇をし、シンガポール現地法人の整理を始めています。
また、日系企業ではありませんが、160年以上の歴史をもつシンガポールの老舗百貨店「ロビンソンズ」が既存の2店を閉店し廃業することになりました。
オンラインショッピングの普及で既に売上は落ちていましたが、新型コロナウィルスの感染拡大によりトドメを刺された格好です。
このままいきますと小売り、サービス業はさらに厳しくなることは目に見えており、とにかくシンガポールは「外国人観光客」を段階的に受け入れていく必要があります。
そしてついに、11月6日から、中国、オーストラリア・ビクトリア州からの観光客の入国制限が解除されることになりました。
入国時のPCR検査が陰性であれば、隔離なしで「自由に」動けるようになります。
同様の措置は、ビクトリア州を除くオーストラリア、ニュージーランド、ブルネイ、ベトナムでは既に適用しています。
日本からの入国者に関しては、引き続き14日間の隔離が必要ですが、11月4日以降入国する場合は、「自宅での隔離」が可能となりました。
但し既に陰性である同居人とは一緒に隔離生活を送ることはできません。
最近弊社にご依頼をあったケースでは、後から来る奥様と3名のお子さんのENTRYAPPROVALを「自宅隔離」で申請致しました。
既に単身で赴任されていた社員はその期間別のホテルで待機するとのことです。
隔離措置はこれまで1室に4名が宿泊するなどかなり無理がありましたが、日本からの渡航者に関しては少しだけ緩和されました。
但しどのみち14日間の隔離は必要なわけで、日本国内の感染が微増している限りでは、中国やオーストラリアのような入国制限解除にはなかなかならない、もしくはこの「緩和」もなくなってしまうかもしれません。
シンガポールから撤退していく企業や、本帰国される方々もいる中、シンガポールに入国されたい方々も業種によっては増えています。
ENTRY APPOVALも以前の用に門前払い的な却下も徐々になくなってきており、入りやすくなってきました。
ただ、門戸を広げたことで、欧州のように第二波にならないよう知恵を絞って頂きたいです。
弊社斉藤連載中Daily NNA 2020年11月5日号「東南アジア人「財」羅針盤」より抜粋
コラム執筆者
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1966年東京生まれ。大学卒業後、小売・流通チェーン「ヤオハン」に就職。1993年より香港本社へ転勤後一貫して人事に携わる。同社清算後も大手人材紹介会社「パソナ」のタイ現地法人社長を務めるなど複数社で人事・経営に携わる。
2006年、タイ国立マヒドン大学経営大学院にて経営学修士取得後、シンガポールにグッドジョブクリエーションズを設立、2014年に同社売却。
2014年6月、シンガポールに、プロの人事集団「プログレスアジア・シンガポール」を設立。真に東南アジアでビジネスを展開する中小企業をサポートすることを使命に再び起業の道を歩む。
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