第157回:テレワークにおける人事管理(その2:業績評価をどうするか)
いつの間にか、12月に入り、ラジオからクリスマスソングが流れるようになりました。
今年はコロナ禍の中で迎える年末年始となります。
世界的にも感染の第3波、4波が発生し、収まるどころか感染拡大が止まらない状態です。
11月の初めには比較的感染が抑えられていた香港との間で、相互往来できる「エア・トラベル・バブル」が期待されていましたが、香港の感染再拡大に伴い、中止になってしまいました。
日本に戻れない状況下、筆者は今年まだどこにも海外へでていないので、香港にいる知人を訪ねる計画をしていましたが、気泡と化してしまいました。
シンガポールにおけるドミトリーを含む市中感染は10日以上ゼロの状態が続いており、市内ではある程度の安堵感が広がっております。
しかしながら、香港を含む世界各国の感染状況により、シンガポール政府も水際政策を臨機応変に進めています。
最近の入国制限の大きな変更点は、日本からの渡航者は11月22日までは入国後に「自宅隔離」が可能でしたが、23日以降は政府指定のホテルで隔離するという従来の措置に戻ってしまいました。
弊社のお客様は、入国許可が下りた段階では「自宅隔離」が可能でしたが、実際の入国時にはポリシーが変更されており、家族4人がホテル隔離になってしまいました。
小さなお子さんもいらっしゃるので、ホテルでの14日間隔離生活は大変かと思います。
なんとか無事にSHN期間を終えてほしいものです。
さて、テレワークにおける人事管理の一環として「評価」があります。
前号でもお伝えした通り、シンガポール人の8割ほどがテレワークを希望しております。
その理由は通勤をする必要がないことが一番大きな理由ですが、ある程度自由に仕事ができる点です。
ただ、テレワークができる業態とそうでない業態があるのも事実です。
金融業や商社など大半の業務をデスク上のPCで仕事ができる場合はテレワークが可能ですが、飲食業や流通小売業などは、物理的にオンサイトでの仕事が必要な業種はテレワークとはほぼ無縁です。
ある小売業では、販促部のシンガポール人が上層部にテレワークを強く希望しましたが、他の販売員との不公平を煽ってしまうことと、販促とはいえども、店舗内での対応等があるため却下しました。
すると、絶望感からなのか、ML(傷病休暇)が増えており、会社側は口頭での注意を促すとのことです。
12月に入りますと、ボーナス・賞与を期待する時期でもありますが、今年はコロナの影響により、各業種の業績は悪化しており、社員の間でも「出る・出ない」の憶測が広がっています。
賞与には、AWS(年次固定賞与)とパフォーマンス・ボーナス(業績連動変動賞与)の2種類があります。AWSに関しましては、「一年間お疲れ様でした」的な慰労金のような位置づけでもありますが、業績連動賞与では、コロナ下で業績での評価が難しくなっています。
事務や総務といった間接部門の業績は、セールスに従事する直接部門のパフォーマンスに連動しており、セールスターゲットに達成したかどうかで「評価」が決まります。
その評価基準が定められない状況下、どう評価をしていくのが困難な状況です。
従って、AWSは支給しますが、業績変動賞与はコロナが収まり景気が上向きになり、業績の見込みが出てきた際に再設定するしかありません。
シンガポールの公務員も今年の年末の賞与はゼロとのことで、民間の苦しさに寄り添っている感があります。
来年は業績評価ができる年に復活すること期待します。
弊社斉藤連載中Daily NNA 2020年12月3日号「東南アジア人「財」羅針盤」より抜粋
コラム執筆者
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1966年東京生まれ。大学卒業後、小売・流通チェーン「ヤオハン」に就職。1993年より香港本社へ転勤後一貫して人事に携わる。同社清算後も大手人材紹介会社「パソナ」のタイ現地法人社長を務めるなど複数社で人事・経営に携わる。
2006年、タイ国立マヒドン大学経営大学院にて経営学修士取得後、シンガポールにグッドジョブクリエーションズを設立、2014年に同社売却。
2014年6月、シンガポールに、プロの人事集団「プログレスアジア・シンガポール」を設立。真に東南アジアでビジネスを展開する中小企業をサポートすることを使命に再び起業の道を歩む。
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