第17回 ASEAN進出起業のジレンマ:その6 就業規則の重要性(3)・・・
先般インドネシアのジャカルタに行って来ました。
夕方の渋滞の酷さは知っていましたので移動に関しては夕方の4時を超えないようにスケジュールを工夫しましたところ大きな渋滞には巻き込まれませんでした。
現在新たな都市交通の手段として地下鉄工事をメインストリート中心に行っていますがどう見ても工事のスピードが遅く本当に再来年開通するのだろうかと笑顔のワーカー達を見ながら思いました。
近くのショッピングモールに行きますとモノが溢れるようにおいてありまた平日の昼間なのに買い物客が多く購買意欲がかなり高い事が伺えました。
またモールの中に入っている「吉野家」で「並」を炭酸飲料付きで注文しましたが日本円で550円程と結構高い印象を受けました。それだけ支払い能力がある中間層が増えてきたということでしょう。
さて、引き続き就業規則の重要性につきまして述べて行きたいと思います。
日系企業の皆様からよく聞かれる事項として「有給休暇」と「病気休暇」の関連性です。日本では「有給休暇」の設定はあるものの一般の傷病に「病気休暇」は特に労基法では定めていません。
筆者が以前東京の会社で仕事をしていた時は、病気で休んだ後に有給休暇届けを出していました。申請をしないと無条件で「無給休暇」になってしまったからです。
また、有給休暇の取得奨励は7月1日から9月30日の間に一週間(5営業日)ほぼ強制的に取る(取らせさせる)ことを会社のルールとして決まっており、取りにくい環境を(これも会社の対面的な事であると思いますが・・・)変えようとしていました。
その中でも会社こそ我が人生のような堅物のN部長は取得していませんでした。査定も含めた一種の会社への「アピール」であったと思われます。
今回の安倍政権でも「残業削減」・「有給休暇の取得奨励」を掲げています。以前、日系企業で仕事をしたことがあるシンガポール人数名に、「日本企業のココがおかしいを指摘してもらった所、「無意味な残業が多い」(上司が帰らないと帰ろうとしない)と有給休暇を取得する際にギルティー(罪)を感じている、の二点を上げました。
シンガポールでは平均的に14日間の有給休暇を設定している企業が多いです。未消化分は繰り上げで最高繰り上げ日数を21日までと制限をしており未消化分は自動的に消失する設定にしています。
就業規則のコンサルをしていますとあまり休暇のところには関心が無いようにも見えます。設定も曖昧なケースが多く未消化分をどうするかが書かれていない労働契約を見ます。この点は上述のようにはっきりさせた方が良いでしょう。
「病気休暇」に関しましては、そもそも日本ではこの概念が薄いので、シンガポール人が有給休暇と同様に「確実」に取得することに憤りを感じている経営者も少なくありません。
3ヶ月就業した後付与される権利で医者のMC(診断書)を取得すればほとんどの企業は外来については14日、入院については60日を有給休暇とは別に付与しなければなりません。
日本ですと医師の診断書は格式があり、値段も安くはありませんが、当地では「頭が痛い」と近所のクリニックに行けば頭痛薬3日分とともに無条件でMC(証明書)が簡単に出ます。
計画的に病気になりMCを取得するローカル社員(現地に慣れた日本人現地採用社員も含む)もおり、そこにはギルティーは存在していません。
ただ権利として規定に織り込んでいる以上は「本当の病気」であることを信じるしかありません。どうしても取らせないようにするには皆勤ボーナスのような金銭的外的要因を目の前にぶら下げる等、何かしら工夫が必要です。ただそれも、「休み<金銭」でないと見向きもされないでしょう。
Daily NNA 2015年1月22日号より抜粋
コラム執筆者
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1966年東京生まれ。大学卒業後、小売・流通チェーン「ヤオハン」に就職。1993年より香港本社へ転勤後一貫して人事に携わる。同社清算後も大手人材紹介会社「パソナ」のタイ現地法人社長を務めるなど複数社で人事・経営に携わる。
2006年、タイ国立マヒドン大学経営大学院にて経営学修士取得後、シンガポールにグッドジョブクリエーションズを設立、2014年に同社売却。
2014年6月、シンガポールに、プロの人事集団「プログレスアジア・シンガポール」を設立。真に東南アジアでビジネスを展開する中小企業をサポートすることを使命に再び起業の道を歩む。
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