第250回:昇給・昇格を実施する際の注意点
日系企業では3月から4月にかけて人事異動や配置転換が行われます。4月からは新年度や新学期のスタートでもあり、企業的にも心機一転、新しい取り組みなどが始まる節目の時期です。
社員の昇給・昇格に関しても、多くの日系企業で4月に見直しが実施されます。一般的には約2カ月前から各社員の評価を行い、その評価結果を踏まえながら個別面談を経て昇給・昇格の提示を行います。

評価はよくある基準として、A評価でもC評価でもなく、中間評価=B評価をベンチマーク(基準点)とするケースが一般的です。
昇給率を決める要素としては社内評価に加え、シンガポール全体の平均昇給率を確認します。2026年に関してはおおよそ3~6%のレンジとなっており、人材関連会社によっては約4.0~4.3%との予測が出ています。
また消費者物価指数(CPI)の動向も判断材料となります。物価上昇率より高い昇給を実現することで、「実質賃金」が 「名目賃金」を上回っている状態が望ましいといえます。
日本でもようやく賃上げの動きが加速していますが、 物価高に追い付いていない状態です。シンガポールの 消費者物価上昇率は2026年2月に前年同月比で1.2%上昇となりました。
今後は外的要因(中東紛争による燃料費高騰など)により変動する可能性もあります。社員の昇給率は、こうした要素を加味しながら、前年度の業績評価と今年度の成長を含めた期待値で設定されます。特に企業にとって不可欠な人材には、平均を上回る昇給率を提示することで、仕事に対するモチベーションを高めることにつなげることができ、リテイン施策(人材 の流出阻止)を図ることも可能です。
一方で、評価の低い社員(組織的には辞めてもらっても構わないという社員)には平均より低い昇給率を提示します。
例えば、事業が好調な日系企業では、S評価の社員の昇給率が7%、A評価が同6%、B評価 が5%(平均より少し上で設定)、C評価が4%、D評価が3%(物価上昇率より少し上で設定)とし、全体では平均4.97%となりました。昇給原資を5%で設定していたため、うまく分配できたケースも見られます。
昇給とあわせて、昇格(プロモーション)もあります。昇給と同様、前年度の業績評価に加えて、新年度から職域を広げ部下を付けるなどして、職責を増やすことで昇格人事を行います。
また、発表前に事前に会社側の意向を伝え、社員に事前の「心の準備」をさせることも重要です。基本給とは別に「役職手当」も設定し、給与明細に記載します。
とある日系企業の例では、役職手当の金額は、マネジャーが500Sドル(約6万2,500円)、アシスタントマネジャーが300Sドル、 シニアエグゼクティブが100Sドルなどと職責に合わせて設定するのが一般的です。昇給通知と同時に昇格の通知も合わせて実施し、面談の場で本人に伝達します。昇格により役割や立場が上がることで、さらにモチベーションも高まり自社の利益に貢献することが期待されます。
昇給・昇格は労使双方にとって重要事項ですので、慎重さと同時に大胆に実行することが肝要です。
弊社斉藤連載中Daily NNA 2026年4月16日号「シンガポール人「財」羅針盤」より抜粋
コラム執筆者

- プログレスアジア 代表取締役
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1966年東京生まれ。大学卒業後、小売・流通チェーン「ヤオハン」に就職。1993年より香港本社へ転勤後一貫して人事に携わる。同社清算後も大手人材紹介会社「パソナ」のタイ現地法人社長を務めるなど複数社で人事・経営に携わる。
2006年、タイ国立マヒドン大学経営大学院にて経営学修士取得後、シンガポールにグッドジョブクリエーションズを設立、2014年に同社売却。
2014年6月、シンガポールに、プロの人事集団「プログレスアジア・シンガポール」を設立。真に東南アジアでビジネスを展開する中小企業をサポートすることを使命に再び起業の道を歩む。
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