第33回 シンガポール総選挙後の動向:外国人雇用の展望
最近またヘイズ(煙害)が広がってきました。PSI(健康指数)は軒並み100を超えており、指数が100を超えるとUnhealthyとなり目や喉が痛くなってきます。
この記事を書いている時点では107となっておりそろそろ昼食の時間ではありますが、Unhealthyな空気を吸い込みたくないので極力近くで済まそうと思っています。
この煙の発信源がインドネシア人の筆者の妻の故郷近辺で発生しているということでなんだか申し訳ないような気分になってきます。
さて、先週の金曜日にシンガポールは公休日にして総選挙を実施しました。5年に一度の改選で2001年、2006年、2011年と続いていきましたので次も2016年とは思っていました。
しかしながら、1年前倒しで、しかも今までは土曜日を投票日としていましたが、それを公休日までにして国民に「信を問う」ことになりました。
その理由としては、2015年は3月に建国の父リー・クワンユーがお亡くなりになり、また今年の建国記念日は建国50週年の節目の年として祝うと共に、今までの与党PAP(人民行動党)が行ってきた政策により国が発展してきたことを現在の首相であるリー・シェンロンが(熱い内に)強調したかったのではと言われています。
結果的には2001年の投票率75.3%から2006年は66.6%、そして前回の2011年は60.1%とこのまま凋落していくのかと思われましたが、今回は69.9%と2006年の66.6%を上回り急回復を果たしました。
89議席の内93%に渡る83議席は圧勝と言えるでしょう。
シンガポールの経済界は<安定>+<繁栄>が今後も見てえてくるとのことで今回の与党圧勝に安堵しています。
日系社会でも来年2016年はS<J>50周年が控えており、安定したシンガポールと日本とシンガポールの友好50周年を迎えることができるのは歓迎すべきことでしょう。
今回、最大野党であるWP(労働者党)は議席を減らし、前回2011年の勢いが止まった形となりました。また他の野党も多数立候補しましたが得票率は20%から40%台と惨敗しています。
筆者は気になっていましたのでSINGAPOREANS FIRST(国民優先党)の演説を聞いていました。
FIRSTの頭文字をそれぞれ、Fairness(公平)、Integrity(正直)、Responsibility(責任)、Sincerity(誠意)、Transparency(透明性)を強調していましたが、要は「外国人を排斥しシンガポール人優位政策を取るべきだ」的な発言があり、いわゆる右傾化した感じを受けました。耳を貸しているのはちょっとシニアな方々でパラパラ感がありました。
結果的には支持はほとんど受けず、大抵のシンガポール人が競争をしながら成長していく真のコスモポリタン(国際人)であることを再認識しました。
この圧勝を受けまして今までのMAX的な外国人労働者受け入れ規制も少々緩和されていくのではないかとの予測もあります。
シンガポール最大の経済団体であるシンガポール事業連盟のテオ会長も、シンガポールが前進していくためには開放的な経済が不可欠で、閉鎖的で外国人の人材や海外からの投資を排斥するような経済になってはならないと訴えています。
シンガポールで仕事をしたい優秀な外国人はまだまだたくさんいます。その方が次の5年までにシンガポール経済を支える人「財」となり得るようEP申請につきましても「緩和」されることを期待します。
Daily NNA 2015年9月17日号「東南アジア人「財」羅針盤」より抜粋
コラム執筆者
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1966年東京生まれ。大学卒業後、小売・流通チェーン「ヤオハン」に就職。1993年より香港本社へ転勤後一貫して人事に携わる。同社清算後も大手人材紹介会社「パソナ」のタイ現地法人社長を務めるなど複数社で人事・経営に携わる。
2006年、タイ国立マヒドン大学経営大学院にて経営学修士取得後、シンガポールにグッドジョブクリエーションズを設立、2014年に同社売却。
2014年6月、シンガポールに、プロの人事集団「プログレスアジア・シンガポール」を設立。真に東南アジアでビジネスを展開する中小企業をサポートすることを使命に再び起業の道を歩む。
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