第43回 人事担当者のお悩み その3 出張手当のあり方
先週東京に出張を致しました。とにかく今海外在住の日本人ビジネスマンが困っているのは「東京のホテルが取りにくい」ことです。
11月にも出発日の2週間前にホテルを予約しようと思いましたが、いつもの定宿は全ての日程、部屋で満室。2,3年前くらい前ではあり得ないことでした。
新宿から八王子までJR中央線沿線を探しましたが予算に見合ったところがネット系のサイトでは予約できませんでした。
結局は地元の商工会のホームページに行き、「電話」で予約をしました。ちょうど紅葉のシーズンと秋の連休時も重なり、さらにアジア観光客も多数きていたこともあったのでしょう。
今回はサクラの前のオフシーズンということもあり、普通の値段でビジネスホテルが取れました。観光立国を目指すのであれば、もう少し宿泊の供給を増やしても良いと思いました。
さて、人材紹介を行う上で、求人案件で出張の有無を確認する必要があります。
というのも出張に関しては「行きたい」人と「行きたくない人」に分かれるからです。「行きたい」人は大概独身女性に多く、そもそも海外旅行の延長戦で、海外で仕事をしてみたいという求職者自身も自分の住みやすい国に海外居住しながら会社の経費でまたそこから海外に行けるとのことで出張はウェルカムなケースが多いです。
現に、これから「日本出張ですっ!」と嬉しそうに宣言する女性社員は多い気がします。
逆に「行きたくない人」は家族を持っているローカル社員が多いです。
同じ中華系シンガポール人に北京出張を命じたら嫌な顔されたとか、インド系従業員にバンガロールの現地工場視察をお願いしたら家族が反対するので他の方にして欲しいとか、喜んで引き受けてくれるだろうと思っていた日本人経営サイドは驚く場合があります。
中華系=中国、インド系=インドという図式は既に単純すぎるかもしれません。彼らは同化を嫌います。
さて、行きたい/行きたくないに関わらず「仕事」として出張に行くのはシンガポールにハブ(管理拠点)をおいている企業であれば当然のことです。
その代わり企業として「出張手当」を支給するのが通常です。
「出張手当」の意味合いは、一般的に被雇用者が通常の勤務地を離れて業務に従事する出張時に、実費交通費や宿泊費以外に出張に伴う精神・肉体的疲労に対する慰労や諸雑費の補助で支給される事が多いです。
「行きたい人」は好きで海外に行ける上に手当までもらえる為、モチベーションは高いです。一方行きたくない人の場合は、手当が出るのなら家族の為俺が犠牲に・・・となりえます。
現在、就業規則を依頼されているお客様からは「手当」の金額の妥当性はいくらですか?と聞いていました。
「妥当」どこで線をひくのかは企業によりけりですが、基本的には大体S$40~S$60が一般的です。また地域限定で、ASEANはS$40、それ以外はS$60と設定しているところもあります。
当該企業は条文としてシンガポール国内の出張と日本出張時は出張手当支給対象外としました。日本は自国で精神的苦痛は受けないとの判断です。
あとは出張手当の開始点と終了点をどこにするかです。
当該企業は半日での出張時(例えば日帰りでマレーシアに出張した場合等)と移動日も含めています。他の企業は宿泊日数を出張手当の日数としてカウントしています。これも企業の就業規則によりけりです。
また細かいことですが、航空券は会社が手配することになっており原則個人での取得は禁止にしているケースが多いです。
というのもいわゆる「マイレージ・サービス」のポイント付加を狙い自分のお好みの航空会社にしてしまう場合があるからです。そこまで管理する必要はないのかもしれませんが、労使双方が納得する出張手当規定を作るべきです。
Daily NNA 2016年2月25 日号「東南アジア人「財」羅針盤」より抜粋
コラム執筆者
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1966年東京生まれ。大学卒業後、小売・流通チェーン「ヤオハン」に就職。1993年より香港本社へ転勤後一貫して人事に携わる。同社清算後も大手人材紹介会社「パソナ」のタイ現地法人社長を務めるなど複数社で人事・経営に携わる。
2006年、タイ国立マヒドン大学経営大学院にて経営学修士取得後、シンガポールにグッドジョブクリエーションズを設立、2014年に同社売却。
2014年6月、シンガポールに、プロの人事集団「プログレスアジア・シンガポール」を設立。真に東南アジアでビジネスを展開する中小企業をサポートすることを使命に再び起業の道を歩む。
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