第78回:東南アジアで何が売れるのか・・・
8月9日はシンガポールの52回目の建国記念日でした。
50回目のセレモニーが記念的で素晴らしかったのを覚えていますが、今年の場合、少しパワーダウンしたような印象を受けました。
また子供達がシンガポール国旗を振って喜んでいる中、一人だけ無表情で中指を突き立てた子供がいてそれを撮影した動画がSNSを通じて特にマレーシアで拡散してしまいました。
「表現の自由」とも捉えることもできますが、シンガポールではそのような行為は将来に関わる重大な規律違反となり、彼に罪の意識があったのかどうかはわかりませんが「シンガポール的教育指導」を受けるのは間違いないと思います。
さて、先般東京で「東南アジアの現法を支える業務改善セミナー」と題してNNAの東京オフィスと営業支援会社ネクスウェイ社との3社合同セミナーを行いました。
第一部ではNNAの方が「アジアで何が売れているのか?」というテーマで、アジア進出すべき魅惑のアジア市場について語られました。
タイの事例では「8番ラーメン」の成功事例について触れられました。
「8番ラーメン」の「8番」は北陸地方の日本海側を通る国道8号線から取っていて、本社は石川県加賀市で国道8号線沿いにあります。
筆者がタイのバンコク滞在中、ショッピングセンターを訪れますと、そこには必ず「8番ラーメン」がありました。
石川県小松市に友人がいるのでその際にラーメンと言えば「8番ラーメン」と本家日本の石川県でも庶民に愛されています。
タイでの成功要因は廉価で日本のラーメン店を再現するというコンセプトで、セントラルキッチンを作り人が集まる大型ショッピングセンターにチェーン展開したことです。
筆者がタイの地方に営業に行った際も、「8番ラーメン」があり、ファーストフードと高級レストランの間のような位置づけで、お客さんで賑わっていたのを覚えています。
一方、確実な商標侵害にはなっていないかもしれませんが、マーケットリーダーが出てくれば、フォロウアー、コピーアーが出てきます。
「1番ラーメン、(タイ語で、ティヌーン)」が出てきましたし、他のラーメンチェーンも出てきました。
とくに日本では有名で筆者も並んでも食べたくなる幸楽苑のラーメンが進出しましたが、残念ながら撤退してしまいました。
撤退する理由としては、日本で「良い」と思ったものを現地の方に「押し付けて」いたケースが見られます。
また現地の方に合わない価格設定をしていて失敗したケースもあります。
8番ラーメンの平均価格帯は80バーツ(約240円)程度で、庶民のお財布感覚、屋台のローカル麺の40バーツと日本の高級ラーメン(らぁめん亭等)200バーツの間を見事に捉えており、中間所得者層をガッチリ掴んでいます。
では高級店のラーメンが売れないかというとそうではなく、それは目的に応じた消費をする為、存続はしていきます。
シンガポールの例で言えば、「一風堂」がそうで、ラーメン一杯20ドル(1,600円)しますが、ラーメン高級店のコンセプトでさらに出店攻勢を仕掛けています。
一方、トムヤン(タイ風味)ラーメンや麻婆ラーメン、カレーラーメン、とんかつラーメンなど、一瞬面白そうなラーメンを展開していたお店はいつの間にか撤退しています。
マーケットに対して「仕掛け」を作ることは大切ですが、それが本当に現地の方が求めているものかどうか、また価格帯があっているのかどうかを熟考しませんと、売れなくなってしまい最終的には撤退につながります。
日本の市場縮小と今後ますます中間所得者層が増えてくる東南アジア市場を鑑み、進出しようとする企業は増えてきますが、現地の視点でじっくりマーケット・リサーチをする必要があります。
弊社斉藤連載中Daily NNA 2017年8月24日号「東南アジア人「財」羅針盤」より抜粋
コラム執筆者
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1966年東京生まれ。大学卒業後、小売・流通チェーン「ヤオハン」に就職。1993年より香港本社へ転勤後一貫して人事に携わる。同社清算後も大手人材紹介会社「パソナ」のタイ現地法人社長を務めるなど複数社で人事・経営に携わる。
2006年、タイ国立マヒドン大学経営大学院にて経営学修士取得後、シンガポールにグッドジョブクリエーションズを設立、2014年に同社売却。
2014年6月、シンガポールに、プロの人事集団「プログレスアジア・シンガポール」を設立。真に東南アジアでビジネスを展開する中小企業をサポートすることを使命に再び起業の道を歩む。
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