第81回:シンガポールのDP(家族ビザ)発給条件厳格化で考える事
10月3日アメリカのラスベガスで銃乱射事件がありました。
ホテルの32階からカントリー・ミュージックのコンサート会場に向けて自動小銃を乱射しました。
59名の無実の方がお亡くなりになり500名以上の方が負傷しました。
犯人は何を考え無差別殺人を行ったのでしょうか?イスラム国が便乗したのかごとく犯行声明を出しましたが、テロとのつながりは無いとのことです。
この他にもアメリカでは銃乱射事件が起きているにも関わらず銃規制の話は議論されますが、アメリカライフル協会「銃犯罪から守るには、善良な市民が銃を持つこと」というポリシーでアメリカ政界、特にトランプ大統領にも影響を与えていることもあり、一向に進んでいません。
一方東南アジアでは、フィリピンやタイは許可制ですが普通の市民が銃を持つことができます。
またタイの場合、観光目的で警察のシューティングレンジで警官のサポート付きで観光客も銃を撃つことができます。警察の臨時収入になっています。
一方シンガポールでは麻薬保持同様、銃は発砲しただけで死刑になるほど重い罰です。
建国以来シンガポールでの銃犯罪というのはほぼ無いのではないでしょうか?日本同様、銃規制を強くしてきた結果でしょう。
さて、10月2日MOM(人材開発省)よりまたまた新たな発表がありました。
今度はDP(家族ビザ)の取得に規制強化です。
今まではEP保持者の月給は5,000ドルでDP が認可されていましたが、2018年1月1日より新規申請に限りその基準が6,000ドルに上がります。
ついに家族ビザの取得条件を上げてさらにEP取得件数を減らしたい事が伺えます。
今年に入りEPの最低給与の基準が従来の3,300ドルから3,600ドルに上がり、さらに「ウオッチ・リスト」政策でシンガポール人雇用に積極的でない企業をリスト化し、さらし首的強硬手段を取りはじめています。
この「ウオッチ・リスト」につきましては先般当コラムでも3回に渡り述べてきました。
シンガポール政府としては、とにかくシンガポール国籍従業員(PRは含まない)と外国人従業員との比率を2:1にすべきとの一辺倒です。
10年来お世話になっている弁護士事務所の方が日本商工会議所と政府(人材開発省)とのトーク・セッションに参加しました。
ある参加者の一人は、「日本人に代わる人材がいないので日本人を雇用せざるを得ない」と力説しましたが、とにかくMOMとして2:1を達成してほしいとの一点張りで個別に相談したい場合はMOMに相談窓口があるので是非来て下さいと、最後は逃げ道をつくりセッションは終わったと聞きました。
筆者も何度も力説していますが、企業はシンガポール人を排斥して採用活動を行うのではありません。
飲食業に関してはビザの関係上シンガポール人を雇いたいのですが、「1万回募集広告を出しても応募がない、だから外国人を雇うしかない」とボヤキの声も聞きます。
日本語を勉強したシンガポール人は趣味で日本語を学び日本の文化が好きですが、その方が必ずしも日系企業に入るとは限りません。むしろ敬遠されています。
その理由の一つとしては、待遇面だけでなくいくら頑張っても上(社長)にはなれないということが分かっているからです。
就職先としては高待遇の米系金融機関の日本法人担当が人気です。
そしてこのDP規制により、現地採用で日系企業を支えてきました方々がシンガポールを去ることを決めるケースが増えてくることが予測されます。
日系企業で活躍されている日本人現地採用の方々は日本から出向で来られる駐在員のサポート要員として重宝されていますが、コストカットを目的とした採用につき、月額給与が6,000ドル越えるケースはあまりありません。
また前述しましたが日本語、日本の商習慣を熟知したシンガポール人は需要に対して供給が足りません。
このような状況下、企業としては人出不足を解消するために人員戦略を立て直すか、アウトソースで穴を埋めていくことを考える必要に迫られます。
弊社斉藤連載中Daily NNA 2017年10月5日号「東南アジア人「財」羅針盤」より抜粋
コラム執筆者
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1966年東京生まれ。大学卒業後、小売・流通チェーン「ヤオハン」に就職。1993年より香港本社へ転勤後一貫して人事に携わる。同社清算後も大手人材紹介会社「パソナ」のタイ現地法人社長を務めるなど複数社で人事・経営に携わる。
2006年、タイ国立マヒドン大学経営大学院にて経営学修士取得後、シンガポールにグッドジョブクリエーションズを設立、2014年に同社売却。
2014年6月、シンガポールに、プロの人事集団「プログレスアジア・シンガポール」を設立。真に東南アジアでビジネスを展開する中小企業をサポートすることを使命に再び起業の道を歩む。
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