第98回:就業規則を作りましょう。その1 就業規則の重要性
先週の日曜日から水曜日にかけて、シンガポールは全世界の注目を集めることになりました。
まず日曜日に北朝鮮の金正恩労働党委員長が中国機でチャンギに降り立ち、夕方にはアメリカのトランプ大統領がパヤレバの空軍基地に降り立ちました。
金正恩氏は会談の前日の夜にシンガポール観光に繰り出し、シンガポールの外相とおそらく初めてのセルフィー(自取り)をしたりしながら、会談前にシンガポールの発展を見学しました。
#Jalanjalan #guesswhwere? pic.twitter.com/oVOk8UuqlC
— Vivian Balakrishnan (@VivianBala) June 11, 2018
シンガポールも世界からかは「明るい北朝鮮」と言われることがあり、統治国家の一つではありますが、北朝鮮が平和、経済発展の方向に転換し「シンガポール・モデル」を追求しても良いのかもしれません。
さて、最近では「就業規則」の作成・見直しのご依頼が急増しています。
これから新規進出するIT企業やシンガポールでオペレーションを始めて3年過ぎた大手企業など、業種は多岐に渡ります。
日本の場合は「労働基準法」で「常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。
変更した場合においても、同様とする。(一部抜粋)」と、<作成と届出>が義務として法令化されています。
10人未満の中小企業でも就業規則を用意しているケースは多いです。
そもそも「就業規則」とは、会社の「憲法」で、憲法で言う国民に当たる社員の為の「法」です。
「国」が違えば憲法も違うのと同様に、「会社」が違えば就業規則も変わってきます。
また社員採用もグローバル化が進み、日本でも人手不足と海外展開を早めるために外国人の採用・登用も増えて行きています。
弊社の日本での提携コンサルタント会社によりますと、最近は就業規則の英語化、雇用契約書の英文化の依頼が増えてきたと言っておりました。
さて、シンガポールでは、実は大前提として就業規則を<作成・届出>する義務はありません。
イギリスの「コモン・ロー」つまり一般常識的な範疇での「法」に遵守すれば良いわけで、それよりも個々に締結する「雇用契約」が重要です。
あるフランス企業に採用された日本人女性の雇用契約書は全部で16ページありました。
一番多く記述されていた項目は「職務分掌」いわゆるジョブ・ディスクリプションで、やるべき仕事がきめ細やかに記載されていました。
基本的に欧米企業では労働者は「ジョブ」と契約するのであって、そこに「カンパニー」の法が存在し、「ジョブ」をこなした上で待遇を受けるということです。
一方、日系企業の雇用契約書を見ますと、ジョブ・ディスクリプションのところが4,5行程度で、メインの仕事がざっくばらんに書いてあり、最後には「その他の業務に関しては上長の指示に従うこと」とあります。
スペシャリストでなく辞令1枚で部署移動が可能なジェネラリストとして企業にとって汎用性の高い社員として育てられた日本人としては「細かいことはいいから頑張れ」のような風潮があるのは否めません。
従来、シンガポールでは従業員より会社寄りの政策を進めて来ましたが、社会全体の少子高齢化をサポートする為の法整備、例えば育児休暇など、従業員寄りの法制が次々と出てきています。
現地の社員は自分たちのベネフィットに敏感で、会社を統治するためにはバージョンアップも含め、現代に即した「就業規則」を用意する必要があります。
社員からいきなり育児休暇の申請が出された際に、その申請を認可する判断材料としてはやはり確固とした法整備が必要です。
また社員にとりましても「法」がしっかりした土壌のもとで安心して働くことにより、会社、自分が与えられたジョブに満足します。
このように現代に合わせた「就業規則」を作成することにより、社員に対して最高のパフォーマンスを期待することができます。
弊社斉藤連載中Daily NNA 2018年6月21日号「東南アジア人「財」羅針盤」より抜粋
コラム執筆者
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1966年東京生まれ。大学卒業後、小売・流通チェーン「ヤオハン」に就職。1993年より香港本社へ転勤後一貫して人事に携わる。同社清算後も大手人材紹介会社「パソナ」のタイ現地法人社長を務めるなど複数社で人事・経営に携わる。
2006年、タイ国立マヒドン大学経営大学院にて経営学修士取得後、シンガポールにグッドジョブクリエーションズを設立、2014年に同社売却。
2014年6月、シンガポールに、プロの人事集団「プログレスアジア・シンガポール」を設立。真に東南アジアでビジネスを展開する中小企業をサポートすることを使命に再び起業の道を歩む。
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