第62回:2016年東南アジア10大ニュース その1 第10位~第6位

2016年もあと残す所一週間あまりとなりました。時が進むスピードが例年より早く感じたのは筆者だけではないかと思います。世界的に特に一番のニュースは、アメリカの次期大統領にトランプ氏が当選したことでしょう。
今年のアジアも激動の年でした。今号は、東南アジア10大ニュースを筆者の独断でまとめました。今号は第10位から6位までの順位です。

第10位:ASEAN共同体発足
2015年12月31日に、「政治安全保障」・「経済」・「社会・文化」の3分野を主としたASEAN共同体が発足しました。これにより世界第4位になる経済共同体ができる潜在能力があると予測されます。最近では対中政策の足踏みの乱れにより結束力が弱くなりつつあるとの指摘もあります。ASEAN共同通貨が出来ればお金の流れも潤滑になるかもしれません。

第9位:シンガポールに初めてのオリンピック金メダル
今年の夏のブラジル・リオデジャネイロのオリンピック水泳バタフライ種目で、ジョセフ・スクーリング選手がアメリカのマイケル・フェルプス選手を抑え、シンガポールで初めての金メダルを獲得しました。マレーシアも男子バドミントン・ダブルスでもう少しの所で金メダルでしたが中国ペアに惜敗しました。因みに東南アジア諸国連合で金メダル獲得数が一番多いのはタイの7個で次にインドネシアの6個が続きます。ベトナムも今大会で、射撃で金メダル1つを獲得しており、新たに東南アジアで2ヶ国が金メダル獲得国となりました。

第8位:中国の海洋進出「敗訴」
7月に、南シナ海での中国の海洋進出を巡り、オランダ・ハーグの仲裁裁判所が中国の主張を退ける判決を出しました。中国の「主張」というのは、「南沙諸島は2000年前から中国固有の領土」だというものでした。南シナ海のほぼ全域の主権を主張して強引に進出する中国に対し、初めて国際司法の判断が下されましたが、案の定、中国は「そのような判決はでっち上げだ」的な対応で聞き耳を持ちません。またラオスやカンボジアなどの中国より経済支援を受けている親中国が中国を支持するような対応を取っており、対抗姿勢を見せるフィリピンやベトナムとは対象的に、ASEAN内でも対応が分かれています。

第7位:フィリピンにドゥテルテ大統領誕生
6月末に、フィリピンの「トランプ」とも言える過激な発言で知られるドゥテルテ大統領がフィリピンの新大統領に就任しました。麻薬の売人を皆殺しにして良いという人権無視の対応にアメリカを中心とした西欧諸国が非難をしましたが、特にアメリカには対抗姿勢を見せ「縁を切る」とも言い出し物議を醸しました。外交では中国に行き、日本に行き、実は何度も日本に来ている親日派であることも分かりました。

第6位:シンガポールマリーナ・ベイ地区でのテロ未遂事件
8月初旬に、マリーナ・ベイ地区へのテロ攻撃の計画があったとして、インドネシア警察により、インドネシア人男性6人が逮捕されました。この6人はインドネシア領のバタム島から約20km離れたマリーナ・ベイ地区を、ロケット弾などで攻撃する計画を策定していました。そもそも手持ちのロケットランチャーでは20kmはおろか20mほどしか飛びませんが、シンガポールがテロの標的になったということは国民にとっても新たな脅威となりました。しばらくは自動小銃を持った警官が多数街の中を警戒巡回していました。

弊社斉藤連載中Daily NNA 2016年12月22日号「東南アジア人「財」羅針盤」より抜粋

コラム執筆者

斉藤 秀樹
斉藤 秀樹プログレスアジア 代表取締役
1966年東京生まれ。大学卒業後、小売・流通チェーン「ヤオハン」に就職。1993年より香港本社へ転勤後一貫して人事に携わる。同社清算後も大手人材紹介会社「パソナ」のタイ現地法人社長を務めるなど複数社で人事・経営に携わる。
2006年、タイ国立マヒドン大学経営大学院にて経営学修士取得後、シンガポールにグッドジョブクリエーションズを設立、2014年に同社売却。
2014年6月、シンガポールに、プロの人事集団「プログレスアジア・シンガポール」を設立。真に東南アジアでビジネスを展開する中小企業をサポートすることを使命に再び起業の道を歩む。