第104回:シンガポール永住権(SPR)を取りたいのですが

先週出張等で日本に帰っておりました。

日本の自動車免許の書き換えは5年ごと(有料ドライバーの場合)にやってきますので5年ぶりに地元の警察署に行き更新手続きをしました。

新しい免許には「平成35年の誕生日まで有効」とありますが平成は来年で終わりなのになぜ西暦にしないのだろうと疑問に思いました。

30分の講習も受けましたが、自転車に関する事項が増えたのが印象的でした。

シンガポールでもキックボード(電動スクーター)と歩行者の衝突事故が増えていることから、速度規制を設ける等議論されています。

では、ジョギングしている人の速度規制はどうするのか?ということも言われています。

車も自転車もキックボードもようはスピードを出し過ぎなければ事故にはなりません。

さて、昨今の労働許可証の新規申請、更新の難易度が高くなってきた為、SPR(シンガポール永住権)を取得したい人が増えています。

これは日本人だけでなく、中華人民共和国の人や隣国マレーシアやインドネシアからシンガポールに仕事を求めて来られる方も含めます。

2017年の人口統計を見てみますと、2016年の52万4千人から52万6千人と2千人、率で言えば0.4%増えています。

これはおそらく申請者が急増した為、絶対数が増えたのではと推測できます。

ただし明らかに認可に関しましては抑制しており、最近シンガポール人と結婚した日本人女性がおりますが、結婚して1年経っていますがまだPR申請は<審査中>とのことで現在はLTSVP(長期滞在ビザ)で仕事をしています。

新規の申請が鈍化しているということは、筆者である私も含めPRの<高齢化>が進んでおり、数を抑制している現状、PRの先駆者が減らないと新規の枠も広がらない状況が続いています。

PRの数が減る要因としては、シンガポール・シチズン(シンガポール国籍)を申請してシンガポール人に格上げ(?)することですが、こちらも審査期間が長期化しており、審査自体厳しくなっています。

日本人PRのほとんどが国籍は日本のままが多いです。

そもそも、PRの概念としては、自分の国籍を保持しつつ、永住を目的としてシンガポールに滞在することができる権利の一部です。

シンガポール国民との大きな違いは、PRを取得してもシンガポールの国政に参加する権利が認められないという点です。

この点は特に不利益を感じません。

国籍は日本ですので、日本の選挙権は在外選挙という形で参政できます。

外国籍居住者としての一番大きなメリットとしては、労働許可が不要なことで、転退職を繰り返しても、労働許可証の再申請の必要がなくなる点です。

また、これをメリットと感じるかどうかはその人次第ですが、PR保持者はシンガポール国民とほぼ同等の福祉サービス、例えば、CPF基金への加入やHDBフラット購入(シンガポール国民とは多少条件が異なります)など、永住権者に認められている様々な制度の利用が可能となります。

日本人のPR取得者の動機を聞いてみると、この2点を「メリット」と感じPRを取られる方が多く見受けられます。

一方、企業側からしてみると、CPFの拠出金を給料の他に支出しなければならなくなり、付帯人件費が発生するということと、従業員側も給料の一部を積み立てなければならないので月に自由に使えるお金の額が減るという点は要注意です。

3回PRを申請して全て却下された日本人の知人がおります。

「自分はシンガポール大好き人間なんですよ」と言っておりましたが、どうやら「片思い」は続くようです。

弊社斉藤連載中Daily NNA 2018年9月20日号「東南アジア人「財」羅針盤」より抜粋

コラム執筆者

斉藤 秀樹
斉藤 秀樹プログレスアジア 代表取締役
1966年東京生まれ。大学卒業後、小売・流通チェーン「ヤオハン」に就職。1993年より香港本社へ転勤後一貫して人事に携わる。同社清算後も大手人材紹介会社「パソナ」のタイ現地法人社長を務めるなど複数社で人事・経営に携わる。
2006年、タイ国立マヒドン大学経営大学院にて経営学修士取得後、シンガポールにグッドジョブクリエーションズを設立、2014年に同社売却。
2014年6月、シンガポールに、プロの人事集団「プログレスアジア・シンガポール」を設立。真に東南アジアでビジネスを展開する中小企業をサポートすることを使命に再び起業の道を歩む。