第123回: 各種VISAを取得する為に乗り越えるべき「壁」

 

毎年この時期になると様々な国別ランキングが銀行やシンクタンクから発表されます。

宣伝の一部かと思われますが、自分が住んでいる国・地域がどの位置にあるのか注意を引きます。

その一つとして2019年の外国人駐在員の住みやすさランキングが香港上海銀行から発表されました。

「生活」「経済」「子育て」の3項目を総合的に評価した結果、シンガポールはスイスの1位に続く2位でした。特に教育の「質」が高く評価されました。

その他の東南アジアの国では、ベトナム(10位)、マレーシア(16位)、タイ(22位)、フィリピン(24位)、インドネシア(31位)がランクインしました。

駐在員にとっては、東南アジアは「住みやすい」との結果です。ただ一方シンガポールは生活コストが1位という結果も出ており。安価では「住みやすさ」は買えないということも言えます。

さて、「すみやすさ」「治安のよさ」もあり、駐在員以外でもシンガポール就労を目指す方は増えています。

前号でSパスの規制強化に触れました。

背景としては単純で外国人労働者の流入の厳格化です。

最近の統計数字を見ますと、EPの数は5%ずつ減っているものの、その反動からSパスが5%増えており、結局数的には何も変わってないことに焦りだしたのか、Sパスの規制を段階的にダイナミックにはじめた形です。

2021年までにSパスを取得するためのシンガポール人及びPRの雇用数が10名しかもその給与額が1300ドル以上のダブルパンチでとにかくSパスの数を減らして行きたい思惑が伺えます。

EPに関しても、今は簡単には行かず弊社に依頼されているケースでも2,3ペンディングになっています。

その一つの原因として、JOBS BANKへの登録です。

同職種同職位同給与の求人広告を出す義務が発生していることを顧客が知らずに申請して却下されるケースです。

また複数のEPを申請する際にまとめてJOBS BANKに出したところ、1EPにつき1JOBS BANK IDが必要とのことで、2つの不注意が重なり、ペンディングが2ヶ月以上続いています。

現地採用で4月に採用決定された方ですが、未だにペンディング状態で引っ越しもできない状態が続いています。

また、EPをようやく取得でき、帯同家族を呼ぶ際も注意が必要です。

今年の2月1日から突如、12才以下の子供のDP(ディペンデントパス)申請に先立ち、予防接種証明書の提出が義務付けられることになりました。

証明が必要な予防接種は、「ジフテリア」(DIPHTHERIA)・「はしか(麻疹)」(MEASLES)の2種類です。

この「証明」をするために日本人の場合は、「母子手帳」に記載された内容を証明する必要があり、またその証明する機関が「Health Promotion Board (HPB)」で、申請者が殺到しているのか、対応が後手で証明をもらうのに時間がかかっています。

とあるメーカーの責任者のEPは2年が下りたものの、6歳と11歳になる子どもたちの帯同家族の予防接種証明が全て日本語で、一旦日本の医療機関で翻訳及び翻訳証明をつけてそれから申請をしてDPが申請できるまでに2,3週間時間を要したケースもあります。

今まで「普通に」申請できた各種VISA取得に関しては、申請料、発行料の値上げ(50%アップ)に加え、上述の通り様々な認可までの障壁を設けています。

今までなかった規制が突如現れることもあり、「知らなかった」では既に「壁」は乗り越えられなくなっており、MOMから発布される情報には常に目を光らせておく必要があります。

 

弊社斉藤連載中Daily NNA 2019年7月11日号「東南アジア人「財」羅針盤」より抜粋

コラム執筆者

斉藤 秀樹
斉藤 秀樹プログレスアジア 代表取締役
1966年東京生まれ。大学卒業後、小売・流通チェーン「ヤオハン」に就職。1993年より香港本社へ転勤後一貫して人事に携わる。同社清算後も大手人材紹介会社「パソナ」のタイ現地法人社長を務めるなど複数社で人事・経営に携わる。
2006年、タイ国立マヒドン大学経営大学院にて経営学修士取得後、シンガポールにグッドジョブクリエーションズを設立、2014年に同社売却。
2014年6月、シンガポールに、プロの人事集団「プログレスアジア・シンガポール」を設立。真に東南アジアでビジネスを展開する中小企業をサポートすることを使命に再び起業の道を歩む。