第127回: SパスからEPに切り替えたいです。

 

英金融大手香港上海銀行が毎年行っている海外駐在員の生活調査レポートによりますと、シンガポールはスイスに次いで、外国人にとって住むにも働くにも素晴らしい環境がそろう国のランキングで二位(前年は一位)となりました。

この手の調査が出るたびに、一体調査対象は誰なのか疑問になります。

最近登録に来ました若い日本人女性はとにかく治安が良いことがシンガポールの一番の利点と言っていましたが、物価については不満が高く、ラーメンが日本円で1,200円(シンガポールドルでは15ドル++)するのが信じられないと言っていました。

どこの層をターゲットに調査しているのかは特に明かしていませんが、「現地採用女性」から見た調査もしてほしいものです。

ただ、やはり大多数が「平安」を感じ生活する上で外国人にとってシンガポールの快適性は肌で感じ取っています。

そのような環境下、シンガポールで就業をしたい日本人現地社員は増えております。

日系企業だけでなく、最近では現地ローカル企業に雇用されるケースが増えています。

最近ローカルの会計事務所に就職された日本人26歳男性は、フランスの大学院も出ており、シンガポールを選んだ理由は会計士の資格を取るために仕事をしながら生活費を稼ぎたいとのことでした。

また母子家庭で育ったので、母親が安心して息子が住める国を選んだとのことです。

ここも「治安の良さ」が大きな要素を占めています。

ローカル企業なのでビザのステータスはSパスで給料は3200ドルでスタートのことで家賃は部屋を借りて900ドルですので生活はできるレベルです。

現地企業ですのでSパスを取得する上での最低シンガポール人雇用数も守っていますので、EPで日系企業に入る場合、いかにフランスの大学院を卒業していてもEP取得するための給料は4000ドルを超えるため、27歳の就業経験のあまりない27歳を雇用する可能性は即戦力を求める傾向の強い日系企業では難しいと言えます。

10年前は日本人現地採用社員の給料は「年齢x100ドル」が一つの基準になっており。需給バランスがあっていました。

もうひとりの女性現地採用社員は日本の有名大学を現役で卒業しており、日系企業3年の経験を得て、現在はローカルの食品系の企業に勤めています。

とにかくシンガポールで就業したいことが主目的でしたので、(とりあえず)就業パスが下りやすい企業で「修行」をしながら日系企業への転職を試みていました。

3月にようやく取引先からお声がかかり転職するステップを踏んでいましたが、EP申請が数回に渡りリジェクトされました。

理由としては、特に明記されていませんでしたが、どうやらローカルの人事担当者がJOBS BANKに掲載するのを怠っていたことが判明されました。

現在10名上の企業はJOBS BANKに同じ職、給料を二週間掲載する必要があり、シンガポール人にも同様の雇用期間を与えることが義務付けられています。

この手続きをしませんと、どんなに良い大学を卒業していてもEPは絶対に下りません。結局数ヶ月待った上でようやく許可が下りました。

念願のEP取得ですが、現在保持しているSパスをキャンセルしませんとEPの発行手続きができません。

現地会社の社長からは口頭でニケ月前ノーティスを伝えたはずと言われたとのことでしたが、雇用契約書上では1ヶ月前ノーティスになっていましたので、嫌な顔をされたようですが、契約上の最終勤務日を決定し、最終出勤日にSパスをキャンセルする手はずを整えました。

当該日系企業も一度採用を出している以上、途中でなかったことにすることはできず取得できるまで待つとのことでした。

現地採用社員にとって終了ビザマターは「治安の良さ」を得るための重要案件です。

弊社斉藤連載中Daily NNA 2019年9月12日号「東南アジア人「財」羅針盤」より抜粋

コラム執筆者

斉藤 秀樹
斉藤 秀樹プログレスアジア 代表取締役
1966年東京生まれ。大学卒業後、小売・流通チェーン「ヤオハン」に就職。1993年より香港本社へ転勤後一貫して人事に携わる。同社清算後も大手人材紹介会社「パソナ」のタイ現地法人社長を務めるなど複数社で人事・経営に携わる。
2006年、タイ国立マヒドン大学経営大学院にて経営学修士取得後、シンガポールにグッドジョブクリエーションズを設立、2014年に同社売却。
2014年6月、シンガポールに、プロの人事集団「プログレスアジア・シンガポール」を設立。真に東南アジアでビジネスを展開する中小企業をサポートすることを使命に再び起業の道を歩む。