第141回:新型コロナウィルスに関する最新規制事項、シンガポール政府の強い意志

2週間前の前号で、世界の感染者数が30人を超えている「パンデミック」状態が続いていると書きましたが、今(4月7日午前10時半)の段階で感染者数が1,347,676名死者数74,679名と収まる気配がありません。

この2週間で感染者数が約4倍以上に膨れ上がっている計算になります。

いつの間にか発生源の中国より、欧米、とりわけアメリカが深刻で感染者数が約40万人ともはや医療が追いついていない状態が続いています。

シンガポールでは、ついに先週1000名の壁を超えてしまい6日の段階では1,375名と急激に増えてきた印象があります。

特に建設現場で働く南アジアからの出稼ぎ労働者の感染が蔓延しています。

筆者も一度だけ仕事の一環として、ワーカーが寝泊まりするドミトリー(宿所)を訪問したことがありますが、約20名分の二段ベッドが窓のスペースがあまりない大きな部屋に置いてあり、そこに数名が出入りしており、またトイレもシャワーも共用で、正直「匂い」がきつく、劣悪な環境との印象を受けました。

そこはいわゆる三密(密集、密接、密閉)の空間であり、感染者が出ればあっという間に二次三次感染がおこります。

現在国内三カ所にあるドミトリーで集団感染が発生しており隔離政策が取られています。

さて、シンガポールでも感染者の抑制が効かなくなってきているこの二週間の間に、政府の政策も目まぐるしく新たな発表がありました。

当初はテレワーク(シンガポールではテレコミュニケーションと言います)を推奨しておりましたが、感染リスクの驚異をそれほど感じていなかったことも影響してか、導入率が一向に上がらないことから、医療機関やスーパーマーケットを除き、一般のオフィスは4月7日から強制的に閉鎖措置をとることを4月3日に首相が発表しました。

さすがシンガポールと思うことは、首相がライブで英語だけでなく、マレー語、中国語の3カ国語でメッセージを訴えたことです。

その中で、職場と学校を1ヶ月間閉鎖することを速攻で決めたことは、もちろん「急」ではありますが、「自粛」よりは「強制」の方が抑制力があり、逆に行動しやすいとは思います。

また、週明けの6日に副首相兼財務大臣から経済活動縮小に対する支援策が発表されるとのことで、国民としては「政府は何かしらの支援策」を示すとの期待感もあり、文句を言う人はあまりいなく、3日の夕方に会社のデスクトップPCを運ぶ人や、書類を抱え込みながら帰宅する人が多数いました。

その支援策の目玉は4月のシンガポール人と永住権(PR)保持者の給与の75%を政府が支給することです。

またシンガポール国民のみですが、一律600Sドルを支給することも決定いたしました。

外国人労働者に対する施策としては、Sパス、ワークパーミット(WP)に課されるLEVY(人頭税)の4月分を免除、更に750Sドルの払い戻しがあります。

この第三弾の経済対策により、7日からの強制職場閉鎖の影響を軽減させるのとともに、雇用主にも解雇の抑制を促し、社会の安定をなんとか保つことと、感染爆発をなんとしても食い止めようとするシンガポール政府の迅速な決断に強い意思を感じます。

規制明けの5月4日にはみんなが笑顔で職場復帰することを切に願います。

弊社斉藤連載中Daily NNA 2020年4月9日号「東南アジア人「財」羅針盤」より抜粋

コラム執筆者

斉藤 秀樹
斉藤 秀樹プログレスアジア 代表取締役
1966年東京生まれ。大学卒業後、小売・流通チェーン「ヤオハン」に就職。1993年より香港本社へ転勤後一貫して人事に携わる。同社清算後も大手人材紹介会社「パソナ」のタイ現地法人社長を務めるなど複数社で人事・経営に携わる。
2006年、タイ国立マヒドン大学経営大学院にて経営学修士取得後、シンガポールにグッドジョブクリエーションズを設立、2014年に同社売却。
2014年6月、シンガポールに、プロの人事集団「プログレスアジア・シンガポール」を設立。真に東南アジアでビジネスを展開する中小企業をサポートすることを使命に再び起業の道を歩む。