第148回:国際展示会の再開とシンガポール入国に関する注意事項

今月の7月10日にシンガポールの総選挙がありました。

最大与党である人民行動党(PAP)の得票率は60%を少し超えるだけで、野党の躍進が目立ち、建国以来はじめて野党である労働党(ワーカーズ・パーティ<WP>)が10議席と二桁の議席を獲得しました。

今後も与党が大多数を占める体制は続くものの、若い世代の「与党離れ」にどのように政府は対応していくのか、コロナの時代に今後の舵取りが重要になってきます。

さて、シンガポールは、国際見本市、展示会いわゆるMICEビジネスで国際的地位を築いてきました。

特に2年前の2018年6月にアメリカのトランプ大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との会談がセントーサ島のホテルで行われ、シンガポールの知名度が世界的にも広がりました。

特にメディアや政府関係者の多くが準備のため長期に滞在し、その際に宿泊、飲食、その他お土産等でシンガポールに約530億円ほどの経済効果があったと言われています。

また国際会議開催能力も高く評価されました。

このままMICEビジネスもどんどん広がっていくだろうと楽観視していたところ、2020年の旧正月開けの2月頃から様子がおかしくなってきました。

弊社としてはFHA2020(FOOD HOTEL ASIA)のイベントでスタッフの派遣業務を請け負う予定で2年前から準備をしていましたが、感染の拡大が広がり、3月末のイベントが全て中止になりました。

日系企業からは60社の参加が決定されており、既に荷物を送ってしまった参加者もいましが、2021年の3月に「延期」となることが決定されました。

MICEビジネス全面中止で一番打撃を受けている業種はイベントを手掛ける広告代理店やイベント会場のブースやパビリオンを作る施工会社で、全ての業務がストップし、当然売上もゼロになります。

広告代理店の責任者は、このままいくと今年中に会社を閉めなければならないと言っていました。

またイベントに従事している従業員の解雇も日に日に増えており、知人のイベント中心の広告代理店勤務で現地採用での日本人は、会社に言われる前に7月末で自ら退職することを決めました。

ただ、市中感染が1日の平均が3名を切っていて感染をコントロールできていること、感染者のほとんどがドミトリーで集団感染したワーカーでその内9割以上が軽症で既に退院していることから、経済活動もいわゆる「夜の接待」は営業を認めていませんが、その業種を除いては、ほぼ通常通り動き始めています。

イベントに関しては、11月頃から国際展示会がいくつか計画されていますが当然、展示会ですから、展示する「人」の入国が必要となってきます。

現在シンガポールでは全ての入国者に14日間の厳しい隔離政策を行っています。

日本から入国する人には政府指定の隔離施設(4つ星ホテル以上)に2000ドル費用を支払う必要があります。

また200ドル程度のPCR検査費用も自己負担となり、陰性とわかるまでは外へ出られません。

特に困るのは食事の手配です。

ホテルに頼むと当然ルームサービスと同じ値段の食事が出てきます。

また、デリバリーサービスでは言葉が通じず注文したものと全く違うものが届けられたりするということもあります。

また隔離施設を自分で選べないこともあり、部屋の中に調理器具がなく、食事はデリバリーサービスを頼むしかありません。

ですので、日本から来られる際は、小分けされた味噌汁や即席カップ麺等、慣れたものを持参することもおすすめです。

とにかく今後どのように展示会を運営してくのか、また展示をする人をどのように入国させるのか、シンガポール政府の「知恵」が再度世界の注目の的になることを期待します。

弊社斉藤連載中Daily NNA 2020年7月25日号「東南アジア人「財」羅針盤」より抜粋

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コラム執筆者

斉藤 秀樹
斉藤 秀樹プログレスアジア 代表取締役
1966年東京生まれ。大学卒業後、小売・流通チェーン「ヤオハン」に就職。1993年より香港本社へ転勤後一貫して人事に携わる。同社清算後も大手人材紹介会社「パソナ」のタイ現地法人社長を務めるなど複数社で人事・経営に携わる。
2006年、タイ国立マヒドン大学経営大学院にて経営学修士取得後、シンガポールにグッドジョブクリエーションズを設立、2014年に同社売却。
2014年6月、シンガポールに、プロの人事集団「プログレスアジア・シンガポール」を設立。真に東南アジアでビジネスを展開する中小企業をサポートすることを使命に再び起業の道を歩む。