第156回:テレワークにおける人事管理

日本を含む新型コロナウィルスの感染リスクが高い国からシンガポールに渡航する際、11月18日より入国前の72時間以内にPCR検査を受ける必要が出てきました。

シンガポール入国後は引き続き14日間の隔離が必要ですが、ここは少し緩和され、日本を含む9カ国からの渡航者は、11月4日以降、自宅での隔離が可能となっています。追記:11/20夜に自宅隔離不可の発表がありました

シンガポール在住者が一度日本に行き再入国を試みる場合、自宅隔離が可能です。

弊社のあるお客様が、家族と従業員(EP保持者)が一緒に住んでいる場合は、同居人としてみなすのかどうか政府に質問をしたところ、家族以外の人でも一緒に渡航し入国した場合は自宅隔離も一緒の場所でOKとのことで、必ずしも「家族」でなければならないということではないようです。

入国に関するポリシーは、各国の感染状況に応じて日々変化し、政府機関によって見解がバラバラな場合もあるため、各機関への問い合わせも含め、慎重にチェックする必要があります。

さて、コロナ禍により、世界各国で「働き方」に変化がでてきました。

自宅でのリモート勤務いわゆる「テレワーク」が普及し、会社に通勤し始業時間から終業時間まで勤務したり、意味のないサービス残業をする必要がなくなってきました。

ストレートタイムズ紙の調査によると、就労者約2,000人に在宅勤務に関するアンケート調査をした結果、約8割が「テレワーク」を希望していると回答しました。

弊社のオフィスがあるフロアも、在宅勤務の嫌いな筆者はほぼ毎日出勤していますが、5社あるテナントのうち、4社の電気は消えたままです。

そのうちの一社は既に看板を外していますが、賃貸契約がそのまま残っているので、「もぬけの殻」状態が数ヶ月続いています。

弊社のあるお客様は、しばらくは社員に出社制限ギリギリのラインで出社させていましたが、アドミン社員から「他の会社は社員に在宅勤務させているのにうちの会社がやらせないのはおかしい!」と陳情されたそうです。

では、なぜシンガポール人はテレワークを好むのかですが、それはもちろん、感染予防の面もありますが、通勤しなくていいことが大きなメリットだからです。

弊社も含め日系企業は、通勤手当を支給しているところが多いですが、シンガポール企業は大抵、通勤手当は出していません。

またオフィスに近い中心部に居住している社員はそれほど多くなく、北西部プンゴルや西のジュロン地区から1時間近くかけて通ってくる社員が多いのも現状です。

また、シンガポール企業で働く友人に聞いたところ、テレワーク手当100ドルが毎月支給されているとのことでした。
名目は、エアコンを使う電気代、インターネット接続料金だそうです。
それで、8時間みっちり仕事をしているかといえば、定期連絡の時だけ、仕事をしている感を出すようです。

管理者の目が光っていなければ怠惰になるのも人間の性でしょうか。

弊社の場合、その定期連絡は、9時、正午、15時、17時半と1日4回しています。
その他の時間帯で、どうも仕事をしているとは思えない場合もありますが、四六時中チェックはできないので、1日4回くらいの仕事の進捗チェックが適度でしょう。

遠隔での人員管理は、週の初めに全員でタスクの確認を行い、進捗を全員でチェックする取り組みが必要です。
昔、筆者が外資系人事コンサルティング会社にいた時に上司から「君はどこにいつ何をしても構わないが、与えられたタスクの成果出せばいい」と言われました。

まさに現在は会社に来ることが目的でなく、成果にフォーカスすることにより、人事評価をすべきかと思います。

弊社斉藤連載中Daily NNA 2020年11月19日号「東南アジア人「財」羅針盤」より抜粋

コラム執筆者

斉藤 秀樹
斉藤 秀樹プログレスアジア 代表取締役
1966年東京生まれ。大学卒業後、小売・流通チェーン「ヤオハン」に就職。1993年より香港本社へ転勤後一貫して人事に携わる。同社清算後も大手人材紹介会社「パソナ」のタイ現地法人社長を務めるなど複数社で人事・経営に携わる。
2006年、タイ国立マヒドン大学経営大学院にて経営学修士取得後、シンガポールにグッドジョブクリエーションズを設立、2014年に同社売却。
2014年6月、シンガポールに、プロの人事集団「プログレスアジア・シンガポール」を設立。真に東南アジアでビジネスを展開する中小企業をサポートすることを使命に再び起業の道を歩む。