第161回:失業率低下から採用マインドへ

今年も早いもので1ヶ月が過ぎ2月に入りました。
中華圏での2月のビッグイベントとして春節(旧正月)があります。

今年は2月12日と13日の二日間が祝日となっており、13日は土曜日の為、翌月曜日の15日をその代休としている企業がほとんどです。

今年はまだコロナ禍ということもあり、お店の飾り付けもどこか例年の派手さはなく、盛り上がりにかけているような気がします。

春節を控え、政府が奨励しているのは、1日に訪問するのはできる限り2世帯まで。
また1日で1世帯が受け入れられる訪問者は最大8名までと、先立って措置を発表しました。

誰がどこまでチェックするのかは分かりませんが、気の緩みによる感染拡大をなんとしても防ぎたい政府の強い意志を感じます。

また例年日本のお年玉に当たる「アンパオ」(いわゆるレッドポケット)を子どもたちに配る習慣があり、新札を銀行で受け取るために、行列ができるのが恒例ですが、今年は新型コロナの影響もあり、「電子アンパオ」の活用を推奨しています。

ただ、やはり現物で渡すのが何十年前からの風習ですのでどこまで普及するかは分かりません。
「ありがたみ」が半減するとの意見もあります。

さて、シンガポールでは新型コロナの感染状況は落ち着いていることから、失業率が改善しております。

MOMの2020年11月の速報値をみると、シンガポール人と永住権保持者(PR)の10月の失業率は4.8%から4.6%に低下しました。

外国人を含めた全体の失業率は同じく3.6%から3.3%とこちらも改善しており、2020年4月~6月に実施されたサーキットブレーカー後に失業率は一時的に上昇しましたが、年末に向けて低下しつつあり、今後は改善していくことが予測されています。

国内経済の回復に伴い、先行きを楽観視し始めている飲食業の経営者も増えています。
南部の商業施設VIVO CITYで飲食業を展開している弊社の顧客によると、20年10月頃から客数、客単価がともに上昇し、12月の売上は前年同月を超えたとのことでした。

従業員には2月第2週にも「電子アンパオ」ではなく、職責に応じ「現金アンパオ」を配布するようです。

ボーナスのような給料の一部として支給すれば、従業員も喜びますし、課税や会社拠出分のCPF積み立ての対象となってしまうため、あくまでも会社からの「ポケットマネー」として処理したい経営側の思惑もあります。

サーキットブレーカー中はお店をたたむことを考えるほど窮地に陥っていた別のファインダイニングの飲食店の経営者も、同じく20年10月から3ヶ月連続で黒字になり、今まで滞っていた支払いを順次返済していけるようになったと安堵しておりました。

海外旅行で外に出られない分、多少高くても飲食に費やして満足しようとする人たちが増えていると分析していました。
こちらも客単価は上がっているとのことです。

業績の見通しが明るくなってきたことで、従業員の採用マインドも向上してきました。
ただその半面、失業率が下がってきますと、採用活動が困難になることも予測されており、今度は人出不足が発生してくるジレンマに陥る可能性が出てきます。

先ほどの飲食店のオーナーはシンガポール人の募集を出していますが、応募者は誰も来ないようで、やはりこの業種は外国人の労働力に頼るしかないとぼやいていました。

弊社斉藤連載中Daily NNA 2021年2月4日号「東南アジア人「財」羅針盤」より抜粋

コラム執筆者

斉藤 秀樹
斉藤 秀樹プログレスアジア 代表取締役
1966年東京生まれ。大学卒業後、小売・流通チェーン「ヤオハン」に就職。1993年より香港本社へ転勤後一貫して人事に携わる。同社清算後も大手人材紹介会社「パソナ」のタイ現地法人社長を務めるなど複数社で人事・経営に携わる。
2006年、タイ国立マヒドン大学経営大学院にて経営学修士取得後、シンガポールにグッドジョブクリエーションズを設立、2014年に同社売却。
2014年6月、シンガポールに、プロの人事集団「プログレスアジア・シンガポール」を設立。真に東南アジアでビジネスを展開する中小企業をサポートすることを使命に再び起業の道を歩む。