第163回:新しい面接方法での選考の難しさ

沖縄の琉球大学の学生への就職支援のプロジェクトの一環として先日、オンライン上でエントリーシートの評価沖や縄県の地場企業10社の模擬面接に参加しました。

筆者は東京、香港、タイ、シンガポールの4地域でおそらく1万人は面接をしていますが、オンラインでの面接はかつてスカイプが流行っていた10年前に中国・広州在住の日本人男性を対象に実施して以来行っていませんでした。

模擬面接には、琉球大学と沖縄国際大学、その他の地元の大学の学生が1社につき4~6人参加しました。

自己PR、ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)、志望動機について、オンライン(ズーム使用)上で1人あたり4~5分行い、グループ討議を実施する形式でした。

筆者の役目は全員が話し終えたあと、また参加企業の方のコメントのあとに「総評」をすることでした。

模擬面接は1社で午前と午後の2回に分けて実施されました。
1回の面接は90分のため、午前と午後で計3時間束縛されますのでかなりの負担でした。

日本の就職事情を鑑みますと、新型コロナ発生前の好景気(2019年)の売り手市場から、コロナ禍(2020年)の買い手市場に180度転換してしまいました。

学生の就活(就職活動)事情も一変し、インターンも制限があり、そもそも会社説明会もオンラインで行われたりしています。
またコロナ収束が見通せない中、オンライン面接が主流になりつつあります。

今回の模擬面接を通じて感じたことは、学生のみなさんが真剣勝負で取り組んでいたことです。
服装も全員リクルートスーツで男性も女性も少しでも印象を良くするため、化粧や身なりを整えていました。

オンライン面接で重要なことは、まずインターネット回線の安定性です。
音声が途中で途切れたり、突然遮断したりすると、その時点で印象が悪くなってしまいます。
またPCのカメラの性能も重要で、中にはスマホでつなげている人もいて、「画面格差」が生じています。

また、これは従来から見られる傾向ですが、エントリーシートの「棒読み」も多く、企業の面接官も書いてあることは既にわかっているため、それ以外のことをお話しくださいと要求しています。

ある学生は書いてある内容を全て暗記しており(ある面それもすごい才能ですが)一字一句間違えないように述べていました。

ただそれだと、面接は単調なかたちで終始するため、残念ながらアピールが足りなく印象には残りません。

企業側の選考も、直接会って面接する従来のやり方から、オンラインになったことで、チェックポイントも変わってきました。

「志望動機の中にどれだけ熱意があるのか」「企業研究、業界研究をしっかりしているのか」といった見極めは従来通りですが、画面上でいかにくみとるかが重要になってきます。

筆者の失敗談としては前述の広州在住の候補者をオンライン面接後に社員として雇い入れましたが、面接での印象と実物(本人)とのギャップ(当社が求める性格・資質との不一致)があり、最後は解雇してしまいました。

オンライン面接の選考の難しさは、画面の奥にある本質的なものをいかに見抜くかですが、今のところこれといった完璧な対策はありません。

学生の中には、企業にいかに熱意を感じ取ってもらうかという対策を考えている人もいます。
コロナ禍での就活は大変かと思いますが、コロナが収束すれば雇用ラッシュが起きることも予測できるため、頑張ってもらいたいです。

弊社斉藤連載中Daily NNA 2021年3月4日号「東南アジア人「財」羅針盤」より抜粋

コラム執筆者

斉藤 秀樹
斉藤 秀樹プログレスアジア 代表取締役
1966年東京生まれ。大学卒業後、小売・流通チェーン「ヤオハン」に就職。1993年より香港本社へ転勤後一貫して人事に携わる。同社清算後も大手人材紹介会社「パソナ」のタイ現地法人社長を務めるなど複数社で人事・経営に携わる。
2006年、タイ国立マヒドン大学経営大学院にて経営学修士取得後、シンガポールにグッドジョブクリエーションズを設立、2014年に同社売却。
2014年6月、シンガポールに、プロの人事集団「プログレスアジア・シンガポール」を設立。真に東南アジアでビジネスを展開する中小企業をサポートすることを使命に再び起業の道を歩む。