第172回:シンガポールへの入国希望者状況

7月12日から飲食店で同一グループが店内飲食できる人数が、従来の最大2人から同5人に「戻り」ました。

筆者も家族3人で外食するケースが多く、これまではレストランに行くと家族2人ともう1人が、それぞれかなり離れた場所に座るよう指示されていました。

シンガポールでは、家族全員で食卓を囲むことが大切にされており、それが制限されていたとあって、市民はかなり我慢を強いられていたかと思います。

先日訪れた近所のホーカーセンターでは、ようやく1人の「ボッチ席」から開放されて家族全員で食事ができるようになりました。

規制が厳しくなったり、緩くなったりの繰り返しではありますが、他の東南アジアの感染状況を鑑みると、シンガポールの防疫体制は優れていると思います。

特にインドネシアは1日あたりの新規感染者が4万人を超えており、現地で日本人駐在員も亡くなっています。
どの国も今年中には収束に向かってほしいものです。

さて、新型コロナウイルス禍が続いていますが、シンガポールへの入国を希望する人は増えています。

本来なら3月から4月にかけて駐在員の入れ替えが必要な日系企業は多いのですが、交代人事が数ヶ月に及んで延期されるケースが目立ちます。

3月~4月に入国申請を完了した人は14日間の隔離措置を終え、5月初旬にはEP(専門職向け就労ビザ)の発行を受けることができました。

ただ5月に入国申請を済ませた人は、シンガポールでの感染状況の悪化に伴い、約2ヶ月にわたって入国を「足止め」をされていました。

それが今月に入り、ようやく入国申請を済ませた人に対して優先的に入国が認められるようになりました。

当初の赴任予定より3~4ヶ月遅れましたが、今月中に隔離が終わってようやくシンガポールでの仕事を開始できるようになっています。

海外出向規定は企業によって異なるものの、筆者がかつて勤務していたスーパー大手ヤオハン(当時)では、海外出向者は原則的に「家族帯同」でした。
欧米企業は「単身赴任」の文化は存在せず、家族帯同がデフォルトになっています。

現在は日系企業の多くも家族帯同が原則になっていますが、駐在員が先に赴任・着任し、居住空間の確保など生活・仕事の基盤を作った上で家族を呼び寄せることを前提としている企業もあります。

弊社では、既に赴任・着任した駐在員から「家族を呼びたい」という要望を多数いただいています。
以前の入国申請が通りやすかった時期には、家族の希望に沿って入国手続き+隔離措置のサポートができていました。

ただ今月13日時点では、新規入国申請の受け付け開始に関する情報は一切なく、駐在員の家族からは「いつになったら入国できるのか?」「MOM(人材開発省)に問い合わせほしい」といった声が挙がっていると聞きます。

駐在員の家族以外でも、永住権(PR)持つ日本人で、日本にいる高齢の家族を連れ戻すため、日本に一時帰国したいという要望を持つ方がいます。

しかし、われわれが高感染国である日本に行くにはPCR検査を数回受け、シンガポールに戻ってもすぐには自宅に戻れず、政府指定の施設で14日間の完全隔離が必要です。

隔離措置や航空券、数回に及ぶPCR検査などの費用を全て足して概算しますと50万円近くかかり経済的・精神的な負担がかなり大きくなります。

自分がシンガポールと日本を往復するよりも、日本の家族を呼び寄せた方がよいのではという考えもあります。

シンガポール日本人会クリニックなどでは、在留邦人向けのPCR検査1回分を無料にすることが決まりましたが、まだ簡単には日本に戻れない状態が続いています。

弊社斉藤連載中Daily NNA 2021年7月15日号「東南アジア人「財」羅針盤」より抜粋

コラム執筆者

斉藤 秀樹
斉藤 秀樹プログレスアジア 代表取締役
1966年東京生まれ。大学卒業後、小売・流通チェーン「ヤオハン」に就職。1993年より香港本社へ転勤後一貫して人事に携わる。同社清算後も大手人材紹介会社「パソナ」のタイ現地法人社長を務めるなど複数社で人事・経営に携わる。
2006年、タイ国立マヒドン大学経営大学院にて経営学修士取得後、シンガポールにグッドジョブクリエーションズを設立、2014年に同社売却。
2014年6月、シンガポールに、プロの人事集団「プログレスアジア・シンガポール」を設立。真に東南アジアでビジネスを展開する中小企業をサポートすることを使命に再び起業の道を歩む。