第202回:応募者が面接に来ない時の対応

今月13日~14日の2日間、東南アジアで最大級の日本食品の見本市「フードジャパン」が、中心部のサンテック・シンガポール国際会議・展示センターで開かれました。

前回は2019年10月31日~11月2日の3日間で、今回は2日間の開催と規模も小さくなりました。ただ、日本の食材をシンガポールで本格的に売り込む機会がようやく復活し、熱気に包まれた会場を見てうれしくなりました。

弊社は出展企業向けに通訳を派遣しました。出展者は「3年近く海外に出ておらず、これから世界展開を考えていきたい」と意気込んでいました。日本企業の海外展開は今後さらに増えることでしょう。

シンガポールでは展示会開催に伴う経済効果(宿泊、飲食、物流の支出など)も大きいことから、こうした大型展示会の継続的な増加に期待が寄せられそうです。

このように、経済活動が活発になり、新型コロナウイルス禍前の状態に戻りつつありますが、その反面、産業界での「人手不足」は続いています。

物流業界ではドライバーが不足しており、特に「クラス4(日本でいう大型免許)」を保有している人材が少ない状況です。

ある日系企業では6月に求人広告を出しましたが、「クラス3(一般の乗用車を運転できる免許)」しか持っていない人の応募が多く、「クラス4」の免許保有者の採用に至るまで3か月かかりました。

ただ、せっかく雇っても他に良いオファーがあればすぐに辞めてしまいます。流通業界でも、セールススタッフの求人広告を出しても応募状況が芳しくありません。

事前予約が不要な面接「ウォークイン・インタビュー」を実施したり、店舗入り口やレジ回りに「スタッフ募集」の広告を出したりしていますが、なかなか人材が集まらないのが現状です。

ドライバーやセールススタッフ以外に、その他のポジションでも求人広告が出ていますが応募者は多くありません。そのような中で応募してくれた人には、求人要件が100%合致していなくても企業の人事部との面接を組みます。

当社は面接代行サービスを提供しており、面接前日に会員制交流サイト(SNS)なども駆使しながら応募者にリマインドの連絡をします。さらに面接当日には念のため電話で連絡し、応募の意志があることを最終確認します。

面接会場に到着すると、採用決定権のある人事担当者のスケジュールを押さえつつ応募者が来るのを待ちます。事前に履歴書をチェックし、聞くべきポイントを整理しながら面接がスムーズに進行し、採用に至るようシミュレーションをします。

先日行った面接では、約束時間を10分経過したところで、応募者が現れず電話をしました。着信音は鳴りますが一向に電話に出ません。面接前の電話連絡では「OK」とのことでしたが、急に来れなくなったのでしょうか。

本人から辞退の連絡は一切なく、「不慮な事故でもあったのだろうか」などといろいろ考えましたが、結果的には面接の「ドタキャン」となりました。

面接や採用に至るさまざまなプロセスに携わる人たちがどれだけ真剣に準備をしているかという点にまで思いが至らず、辞退の連絡1本すら入れないことには驚くばかりです。

ただ、それだけ仕事の選択肢があるとも言えます。また意外と「(たくさん応募していて)どこに応募したのかを覚えていない」という人も多いのが現状です。

面接の「ドタキャン」を避けるには、まず事前の連絡をギリギリまで行い、必ず面接に出向くよう最大限の努力を行う必要があります。応募者に分かりやすい募集内容を提示し、注目させて応募の動機付けを行うことも肝要です。

弊社斉藤連載中Daily NNA 2022年10月20日号「シンガポール人「財」羅針盤」より抜粋

コラム執筆者

斉藤 秀樹
斉藤 秀樹プログレスアジア 代表取締役
1966年東京生まれ。大学卒業後、小売・流通チェーン「ヤオハン」に就職。1993年より香港本社へ転勤後一貫して人事に携わる。同社清算後も大手人材紹介会社「パソナ」のタイ現地法人社長を務めるなど複数社で人事・経営に携わる。
2006年、タイ国立マヒドン大学経営大学院にて経営学修士取得後、シンガポールにグッドジョブクリエーションズを設立、2014年に同社売却。
2014年6月、シンガポールに、プロの人事集団「プログレスアジア・シンガポール」を設立。真に東南アジアでビジネスを展開する中小企業をサポートすることを使命に再び起業の道を歩む。