第42回 人事担当者のお悩み その2 有給休暇の取り方

新年快楽!恭喜發財!

2月8日と9日は旧正月でシンガポールは久々に連休でした。中華系企業は今週まで休みのところが多く今日のラッフルズプレイス界隈もまだいつもの賑わいを取り戻していません。

またローカルチェーンのスーパーマケットも旧正月の前日の夕方頃に店を閉め、この連休二日間は完全休業でした。

日本でもかつては元旦と2日目は完全休業していたと思いますが、最近ではほとんどのお店が元旦営業をしているように感じます。一方中華圏では一部を除きしっかり休業しており、逆に清々しさを感じます。

さて、今回のお悩みはとある日系商社のお客様からの「お悩み」です。

社員数は日本人の現地採用社員が1名と現地ローカル役員の小規模組織でシンガポール支社長は原則日本におります。

当該社員は既に2年以上勤務しており、管理職のポジションとそれに見合った給料を支給しています。実質1名で支社を担当していますので、経理や総務等の業務報告は本社の経理部にする必要があります。

雇用契約は現地の商慣習に従い、シンプルなものを交わしています。その中で有給休暇日数は年間14日と定められています。但し「管理職」なのでそれ以上の細則は書かれていません。いわゆる暗黙の了解事項です。

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支社長が驚いているのはその有給休暇の取り方です。

会社の方針としては、プロジェクトが発生するので原則有給休暇申請は取得の1ヶ月前と日本の本社では定められています。つまり3ヶ月前の申請は受け付けないとのことです。

当該社員は夏の日本への帰省のチケットを1月に取らないと高くなってしまうのでシンガポールだけ例外を認めて下さいと支社長に直訴しました。

そもそも会社としては社員がいつ飛行機を取るかは関係なく、万が一仕事が入り行けなくなることが予測できるのであれば、ちょっと高めでもリファウンド可能なチケットを取るべきで、その点のリスクについては社員が負うものと判断できますが、支社長はこういうケースは会社が弁償しなければならないのですか?と聞いてきました。

そもそもシンガポール支社に「就業規則」のようなものは整備されていなく、「法治」より、その都度問題が発生する度にその時の考えで判断してします「人治」になりかけています。

日本の経営がメインなのでシンガポールの事情についてはあまり詳しくなく、現地社員の少し「いいなり」になっている感があります。

この社員の上司も日本におりこの管理者が彼女の有給休暇管理を行っています。あくまでも1ヶ月前申請でないと受け付けないポリシーは貫くようで日本とシンガポールの間に摩擦が起きています。

支社長の期待・希望としては、「管理職」なんだから、有給休暇は仕事への延長線にあるもので取得に関しては仕事を完遂したあとに取るべき論があります。

しかしながら当該社員側は、有給休暇は「社員の権利」であり基本的には仕事が入ろうとなかろうと取得は自由との考え方があります。

ある日系メーカーですと社員数は多いものの、スタッフの半数以上が12月の同時期に有給休暇を申請し困ったとのお話を聞きました。

これは有給休暇取得期間が1月1日から12月31日までとなっており繰越禁止のケースです。

権利が消滅するのであれば全て使わないと「損」と思うのは当然で、この会社は翌年より、繰越制度と人事部による夏季繁忙期ではない時での有給休暇取得奨励を促すようになりました。

日系企業で働くローカルスタッフにヒアリングをした所、日系企業は「遅刻に厳しすぎる」ということと「有給休暇取得がギルティー(罪)と感じている雰囲気がある」の意見がありました。

取得できない環境を作るのではなく、労使双方が納得行くような有給休暇取得の「ルール」を作成する必要があります。

Daily NNA 2016年2月11 日号「東南アジア人「財」羅針盤」より抜粋

コラム執筆者

斉藤 秀樹
斉藤 秀樹プログレスアジア 代表取締役
1966年東京生まれ。大学卒業後、小売・流通チェーン「ヤオハン」に就職。1993年より香港本社へ転勤後一貫して人事に携わる。同社清算後も大手人材紹介会社「パソナ」のタイ現地法人社長を務めるなど複数社で人事・経営に携わる。
2006年、タイ国立マヒドン大学経営大学院にて経営学修士取得後、シンガポールにグッドジョブクリエーションズを設立、2014年に同社売却。
2014年6月、シンガポールに、プロの人事集団「プログレスアジア・シンガポール」を設立。真に東南アジアでビジネスを展開する中小企業をサポートすることを使命に再び起業の道を歩む。