第44回 人事担当者のお悩み その4 傷病休暇の取得について

先週3月5日の土曜日にJUGAS(Japanese University Graduates Association of Singapore)、日本語名、シンガポール日本の大学留学生協会のお招きでタレント。マネージメントのセミナーの民間人材企業としてのパネリストとして招かれました。

土曜日にも関わらずアジア各国からかつて日本へ国費留学生として留学した方々が多数参加されました。

インドネシアやベトナム以外にも、ブルネイ、ラオス、カンボジアの中でもかなり優秀で現在自分でビジネスを立ち上げている方や、政府機関で勤務している人もいました。

80年台から90年台の日本は、アジアの学生達の羨望の国で、東京工業大学で5年間必死に勉強した人や、若い方であれば早稲田大学とシンガポールのNTU(南洋工科大学)のダブル・マスターディグリーコースを選考した人など、世代を超えて「日本」で勉強した人が一同に集まり日本語と英語のミックスで会話をすることができ、とてもおもしろい経験をしました。

果たして今の学生が今の「日本」に本当に留学したいと思うのかは疑問ですが、日本政府としては今後も多くの留学生を受け入れていくとの方針です。

いつも「受け入れ」という言葉に違和感を覚えます。「受け入れ」ではなく「獲得」ではないでしょうか?それは今後必要とされる移民政策にも当てはまるのではないでしょうか・・・?

さて、今回のお悩みは「傷病休暇」です。

会社が社員に与える休暇の権利として「有給休暇」があります。有給休暇につきましては先般述べましたが、有給休暇の他に傷病休暇(もしくは病気休暇=Sick Leaveといいます)があり、通称MCと呼んでいます。

MCとはMedical Certificateの略で、医師の診断書のことを指しますが、通称「MC取ります」と言えば「傷病休暇を取ります」と同義語になります。

かつては、適用開始期間が入社後6ヶ月でしたが、3ヶ月に短縮されました。日数は入院なしで年間14日まで、入院ありで年間60日までとなっています。

大抵の企業が3ヶ月の試用期間終了後、14日間のMC=傷病休暇取得日数と年間60日までの入院休暇を設定しています。

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最近進出された当該企業の人事担当者のお悩みは「本当に病気で休んでいるのか?」との疑問です。

ちょっとプロジェクトが進み忙しくなってきたところで、9時になっても来ないので他の総務の社員に「Aさんどうしたの?」と聞いいた所、「シー・テックMC」(She takes MC)と素っ気ない返事が返ってきて驚いたとのこと。「WHY?」と聞いたところ、病気でしょ?とこれまたそっけない返事。休むには理由があり、その理由を明確化するのが普通なのではと思った次第です。

Aさんに関しましては昨日「本当に」調子が悪くなり、今日病院に行き診断及び治療を受けておりMC(診断書)を取り、会社に提出すれば傷病休暇取得となります。

有給休暇とは違い、病気は予測できないことから、事後申請となっています。

傷病休暇については、あくまでも従業員がやむなく病気になってしまった場合、医師の診断書を携えて、病気休暇を取得できる権利で、別に何も無ければ使う必要はないのですが、一部の従業員の中には「使わないと損」と考える人もいます。

変な言い方ですが、計画的に病気になるケースもあり、上手く活用しない同僚を嘲笑する場合もあるようです。

日本の場合医師の診断書を取るのには1件3000円程度と(保険適用外)と高いコストが掛かりますが、当地の個人経営のクリニックでは、すぐに診断料として発行してくれます。

ちょっと頭が痛いので近所のクリニックに行って30Sドル程度の医療費(診断+薬)を払って休暇が取れるので、14日分をまるまる使う従業員もいます。「ご利用は計画的に」という言葉が思い浮かびました。

Daily NNA 2016年3月10 日号「東南アジア人「財」羅針盤」より抜粋

コラム執筆者

斉藤 秀樹
斉藤 秀樹プログレスアジア 代表取締役
1966年東京生まれ。大学卒業後、小売・流通チェーン「ヤオハン」に就職。1993年より香港本社へ転勤後一貫して人事に携わる。同社清算後も大手人材紹介会社「パソナ」のタイ現地法人社長を務めるなど複数社で人事・経営に携わる。
2006年、タイ国立マヒドン大学経営大学院にて経営学修士取得後、シンガポールにグッドジョブクリエーションズを設立、2014年に同社売却。
2014年6月、シンガポールに、プロの人事集団「プログレスアジア・シンガポール」を設立。真に東南アジアでビジネスを展開する中小企業をサポートすることを使命に再び起業の道を歩む。