第57回 人事担当者のお悩み:その16 採用活動の困難さ

最近日本でも大きなニュースになりましたが、タイムズ・ハイアー・エデュケーション(THE)が2016年の「THE世界大学ランキング」を発表しました。相変わらず上位の殆どがアメリカとイギリスの大学で一位はイギリスのオックスフォード大学でした。

東大

THEのアジアの大学ランキングでは、シンガポール国立大学(NUS)と同じくシンガポールの南洋理工大学(NTU)がトップ2で、3位から6位まで中国と香港の大学が占め、日本の最高位である東京大学はアジア7位に後退してしまいました。

世界レベルで見ますと39位で昨年43位より上昇しましたはが、アジアの大学にどんどん追い抜かれていっています。その他は京都大学がアジア11位(世界91位)で此方は昨年より順位を下げています。

東南アジアでは、アジア70位でマレーシア工科大学、私が卒業したマヒドン大学が90位で、他にタイの大学が1校と東南アジアではシンガポールを除いて3ヶ国しか入っていませんでした。東南アジアの大学も東アジアの大学が健闘していますので頑張ってほしいものです。

さて、今回のお悩みは「候補者がいない」とのお悩みを抱えているDさんです。ある新規進出サービス業からの求人の相談を受けました。

弊社で総務代行オペレーションを行っていましたが、社内で1名営業ができる日本人を現地採用で雇いたいとのことで、選考のお手伝いをすることになりました。

採用に関しては日本でも何度か経験をしている方でしたが、海外では初めてとのこと。まずいちばん驚いたのはシンガポール島内に日系人材紹介会社が数多くあることでした。

筆者も東南アジア2カ国で2社の人材紹介会社を経営しておりましたが、日系進出企業の多さに比例して数が増えて行きました。

現在ではとにかくすぐに求人企業にマッチする「候補者」が不足していることから、Dさんの求人案件に対しても中々希望に適う候補者は出てきませんでした。求人サイトやSNSを使って候補者を募りましたが、応募は多いものの「この人はどうして応募してくるのだろう?」と首をかしげるケースが増えてきました。

最近特に思うのは、日本の有効求人倍率が回復し正社員での雇用機会も増えてきた事と、昨今のテロ事件のニュースがテレビのニュースで再三取り上げられ、「海外は危ない」と思う若い方が増えてきた事の2点が「海外で働いてみよう」というマインドを削っているように思えます。

Dさんは日本であれば募集を出せばすぐに候補者が数名集まる経験をしているので、このように苦戦するとは思いもよりませんでした。

またやっと面接をして「いいな」と思った候補者を2,3日待っていましたら、他社に行ってしまい、「2,3日の間で複数面接が入るのですか?」と聞かれました。シンガポールを始めとする東南アジアでの採用状況は、求職者もどこに応募したのか分からないほど応募をしてきますし、人材紹介会社も手持ちの候補者を多数紹介する場合があります。

その中から最良の候補者を選ぶのはご縁があるかどうかにも関わってきますがなかなか難しい点です。

ようやくアジア大学ランキング3位(北京大学)を卒業された日本語のできるシンガポール人男性と現地サービス業で勤務をしていた日本人女性を面接することになりました。

100%マッチする人材はそうは出てきませんので、ある程度の採用要件を満たしている人であれば、まずは採用してみても良いのではとアドバイスしました。熟考している間に他に行く場合もありますので早い決断も必要です。

Daily NNA 2016年10月13日号「東南アジア人「財」羅針盤」より抜粋

コラム執筆者

斉藤 秀樹
斉藤 秀樹プログレスアジア 代表取締役
1966年東京生まれ。大学卒業後、小売・流通チェーン「ヤオハン」に就職。1993年より香港本社へ転勤後一貫して人事に携わる。同社清算後も大手人材紹介会社「パソナ」のタイ現地法人社長を務めるなど複数社で人事・経営に携わる。
2006年、タイ国立マヒドン大学経営大学院にて経営学修士取得後、シンガポールにグッドジョブクリエーションズを設立、2014年に同社売却。
2014年6月、シンガポールに、プロの人事集団「プログレスアジア・シンガポール」を設立。真に東南アジアでビジネスを展開する中小企業をサポートすることを使命に再び起業の道を歩む。