第63回:2016年東南アジア10大ニュース その2 第5位~第1位

2017年が静かに始まりました。アメリカの新大統領就任やさらに混沌とするシリア情勢、移民問題で揺れる欧州、韓国の大統領弾劾裁判の行方、等、上げたらキリがないほど世界情勢は混沌としている感じがします。

昨年前号に続き、今号は、筆者の独断で決めました東南アジア2016年10大ニュースの第5位から1位までの順位を発表して参ります。

第5位:ミャンマーのアウン・サン・スー・チー氏4閣僚ポスト就任
かつてのミャンマーの民主運動の指導者、現在の与党国民民主連盟党首のアウン・サン・スー・チー氏が外務大臣、教育大臣、エネルギー大臣、大統領府大臣の4省庁の大臣を兼任することになりました。本来であれば大統領のポストに就くべきですが、息子が英国籍の為、現行の憲法上、大統領には就任できないということで、国の重要ポストを兼任することになりました。7月のラオスの首都ビエンチャンで開かれたASEAN外相会議で外相デビューをし、会議の内容よりスーチー氏に関心が寄せられました。

第4位:インドネシアの首都ジャカルタで暴動発生
11月5日にインドネシアの首都ジャカルタで、最近では見られなかった大規模デモが起きました。事の発端は、中華系でキリスト教徒であるジャカルタ首都特別州のバスキ(アホック)知事がイスラム教の聖典「コーラン」の教えに関して発言したことが、「イスラム教を侮辱した」と捉えられたことでした。同知事が住民向けの演説で発言したことを、一部の住民がSNS(ソーシャルメディア)を通じて拡散しました。その結果、大きな波紋を呼び、各イスラム教団体から反発の声が上がり、一部暴徒化しました。東南アジアでは、「信教の自由」は認められていますが、デリケートなマターなだけにちょっとしたことで大きな経済損失にもなりかねません。

第3位:タイのホアヒンで爆弾テロ発生
8月11日から12日にかけて、タイの王様の保養地でも知られるホアヒンを含む8箇所の場所で計8件の爆発があり4人が死亡しました。8月12日は王妃の誕生日でタイでは「母の日」と呼ばれる「平和の祝日」です。死亡した一人はソムタム(タイのサラダ)を一生懸命屋台で売っている女性で、何も罪のない人が犠牲になる爆弾テロにタイ全体が暗いムードに陥りました。

第2位:シンガポールとマレーシアを結ぶ高速鉄道建設最終合意
12月13日シンガポールとマレーシアの両国首相は、2026年末までの開業を目指すシンガポール―クアラルンプール間の高速鉄道建設にようやくゴーサインを出しました。この路線はアジアで初めての越境高速鉄道となりアジア鉄道開発のモデルとなることから、来年の国際入札に向けて日本と中国の一騎打ちが既に始まっており、安倍首相もトップセールで日本の新幹線の売り込みをしています。筆者のシンガポールの友人は中国製なら乗らないと言っていますが果たしてどちらが受注を勝ち取るでしょうか?

第1位:タイのプミポン国王崩御
10月13日タイのプミポン国王が崩御されました。誕生日は1927年12月5日で88歳の生涯を終わられました。即位から崩御まで70年の王位を保ちこの「長さ」は王位最長期間としてギネスブックに載っています。タイの一つの大きな時代が終焉したことを物語るでき事でした。東南アジアで重要な主要国タイ王国の今後の安定は東南アジアにとりまして、重要であることから、今後の安定を切に願います。

以上2回に渡り筆者の独断による2016年の東南アジア重大ニュースを述べて参りました。2017年が世界に、東南アジアにとりましてさらに安定・飛躍の年であることを期待します。

弊社斉藤連載中Daily NNA 2017年1月5日号「東南アジア人「財」羅針盤」より抜粋

コラム執筆者

斉藤 秀樹
斉藤 秀樹プログレスアジア 代表取締役
1966年東京生まれ。大学卒業後、小売・流通チェーン「ヤオハン」に就職。1993年より香港本社へ転勤後一貫して人事に携わる。同社清算後も大手人材紹介会社「パソナ」のタイ現地法人社長を務めるなど複数社で人事・経営に携わる。
2006年、タイ国立マヒドン大学経営大学院にて経営学修士取得後、シンガポールにグッドジョブクリエーションズを設立、2014年に同社売却。
2014年6月、シンガポールに、プロの人事集団「プログレスアジア・シンガポール」を設立。真に東南アジアでビジネスを展開する中小企業をサポートすることを使命に再び起業の道を歩む。