第241回:履歴書・職務経歴書の詐称を見抜くには

今回のコラムでは、求職者のレジュメ(応募書類)や職務経歴書の内容について触れていきます。

顧客企業から人材採用のご依頼を受ける際、まずはポジション、業務内容、雇用条件、福利厚生などの要件をもとに募集広告を出します。募集広告は採用ポジションに応じた人材プラットフォームに掲載します。釣りに例えるなら、求める「魚」がいそうな「漁場」を選定し、「餌」をしかけて釣り上げるといったところでしょうか。

その後、人材を採用する企業はレジュメや職務経歴書を選別していきます。人間が一人ずつ違っているように、内容も千差万別です。また、どのレジュメ・職務経歴書も自己申告のため、どこまで真実なのかは分かりかねます。1枚でシンプルにまとめ上げているものもあれば、文字数が多く読み手のことを考えていないような、自己主張の強いものも見られます。

自分の応募書類が求人企業の担当者の印象に残ってほしいと思う求職者の気持ちは理解できます。一方で、求人企業側は書類選考で、応募者が自社で求めるポジションに見合った人材かどうかを見極める必要があります。レジュメ・職務経歴書は上述の通り、自己申告がベースのため、記入内容が真実かどうかを書面上だけで判断するのはかなり難しいですが、まずは書いてあることを信じようという「性善説」に沿って選考し、数人の候補の中から企業面接を実施していきます。

人材紹介会社を通して採用する場合は、所定の「登録フォーム」が用意されている例が多くみられます。登録フォームを「手書き」で書かせることにより、「嘘」を書くということは、まず考えられないとある程度確認することもできます。さらに、自己紹介の詳しい話などレジュメ・職務経歴書以外の内容をチェックすることにもつながります。

職歴に関しては過去にさかのぼる必要があり、職歴が短い場合は退職理由と次の仕事へのつながり(転職理由)を重点的にヒアリングすることで、職務耐性を知ることが可能になります。ただし、実際に本人が自主的に辞めたのか、雇用主から辞めさせられたのかも自己申告になります。レファレンスがあれば前職の会社の方に聞くことはできますが、まずは信じるしかありません。

学歴に関しては、大学であれば卒業証明書を確認する必要があります。卒業証明書といえば、最近の日本のニュースで静岡県伊東市の市長の「学歴詐称疑惑」が世間の注目を集めています。市の広報誌には「大学卒業」と記載されていましたが、本人は記憶が曖昧(あいまい)だと説明され、実際には「除籍」で大学を卒業していないことが判明しました。

「卒業証書」とする書類を市議会議長らに提示した場面が映像で残っていました。しかし、本人は卒業していないことを隠し大卒として市長となったことによって、「改めて市民の判断を仰ぐ」と発表して市長を辞職し、再立候補することになりました。上述の市長のように卒業証書をチラッと見せるのではなく、そのコピーを十分に確認することが必要になってきます。しかし、証書そのものが「偽物」である場合は正直、見抜くことは困難です。

学歴詐称を防ぐ手段として、シンガポール政府は学歴証明書を検証・審査する専門業者を指定しています。同国では以前、学歴詐称する人の割合が多かった中国とインドの大学の卒業証明書のみチェックしていましたが、現在は全ての外国人が高技能労働者向け就労ビザ(EP)の取得・更新時に学歴証明書の真偽の証明が義務付けられました。言い換えれば、それだけ学歴詐称のケースが多いということになります。採用後に詐称が発覚することがないよう、全方位でチェックを行う事が重要になります。

弊社斉藤連載中Daily NNA 2025年7月17日号「シンガポール人「財」羅針盤」より抜粋

コラム執筆者

斉藤 秀樹
斉藤 秀樹プログレスアジア 代表取締役
1966年東京生まれ。大学卒業後、小売・流通チェーン「ヤオハン」に就職。1993年より香港本社へ転勤後一貫して人事に携わる。同社清算後も大手人材紹介会社「パソナ」のタイ現地法人社長を務めるなど複数社で人事・経営に携わる。
2006年、タイ国立マヒドン大学経営大学院にて経営学修士取得後、シンガポールにグッドジョブクリエーションズを設立、2014年に同社売却。
2014年6月、シンガポールに、プロの人事集団「プログレスアジア・シンガポール」を設立。真に東南アジアでビジネスを展開する中小企業をサポートすることを使命に再び起業の道を歩む。