第240回:ビジネスの場での「即レス」について
ビジネス場では、メールやチャットを早く返信する「即レス(即時レスポンス)」が重要だといわれます。お客様から弊社に寄せられる苦情として、「レス(返事)が遅い」「無視されている」「相手にされていない」といった内容が見られることがあります。
とある顧客企業からは、弊社の男性社員に送った依頼に関するメッセージへの返事が遅いと連絡がありました。これは弊社全体のイメージ低下につながってしまいます。先ごろこの顧客企業に謝罪をし、今後「即レス」するための解決策(担当者を別の社員に変更する等)を提案、実行していくことに決定いたしました。
「即レス」は質問する側からすると、「自分のメッセージをきちんと見てくれている」「放置されていない」という心理的な安心感を得ることができます。また、「即レス」ができる人は、常に周囲の動きにアンテナを張っており、仕事ができるというイメージを相手にもってもらいやすいです。
ただ、「即レス」をする必要性が問われる場合もあります。ある女性経営者は、週末や深夜でも弊社男性社員にメールを送信し、その返信が遅いと言ってきました。勤務時間外に先方に返事をすることは「時間外労働」に当たるため、週末に受信したメッセージは翌月曜日(弊社男性社員の次回出勤日)に対応すると相手に伝えることにより「レスが遅い・レスがない」という不満を回避することができます。

「WhatsApp (ワッツアップ)」などのメッセージアプリでは、絵文字を一つ返すだけでも、「即レス」で反応したとみてもらえます。これまで話し合ってきた会話がひとまず終わったと双方が理解することもできます。
メッセージアプリは、いつでもどこでもメッセージを送れる便利さがあります。しかし「業務時間外」にメッセージを送る場合、重要案件や緊急性の高い話などをする場合も多い経営者同士であればまだ理解できますが、経営者から相手先の社員、あるいは上司から部下への送信は今の時代、パワハラやカスハラ(カスタマーハラスメント)と捉えられる可能性があるため、注意が必要になります。
病気や家族の不幸など緊急の場合は「至急」とタイトル付けるようにするとよいでしょう。また、忘れないうちに、備忘録的に部下に対して業務内容を伝達したい場合、「返信不要」と前置きし、「目を通しておいて下さい」といった程度で伝えるのであれば相手にも理解してもらえると思います。
「即レス」は基本的に評価されますが、それが双方にとってストレスにならないよう配慮することが重要になってきます。
弊社斉藤連載中Daily NNA 2025年6月19日号「シンガポール人「財」羅針盤」より抜粋
コラム執筆者

- プログレスアジア 代表取締役
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1966年東京生まれ。大学卒業後、小売・流通チェーン「ヤオハン」に就職。1993年より香港本社へ転勤後一貫して人事に携わる。同社清算後も大手人材紹介会社「パソナ」のタイ現地法人社長を務めるなど複数社で人事・経営に携わる。
2006年、タイ国立マヒドン大学経営大学院にて経営学修士取得後、シンガポールにグッドジョブクリエーションズを設立、2014年に同社売却。
2014年6月、シンガポールに、プロの人事集団「プログレスアジア・シンガポール」を設立。真に東南アジアでビジネスを展開する中小企業をサポートすることを使命に再び起業の道を歩む。
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