第131回: シニア人材の再就職の現状
先週の月曜日11月4日突然LTA(シンガポール陸上交通省)が翌日5日より、PMD(電動キックスクーター)の歩道での走行を完全に禁止すると発表しました。
驚くのは発布して翌日から施行するという独裁国家並みの電光石火的措置です。
確かに夜に歩道とか歩いていると後ろから「すぅ~と」と近づいてきてハッとすることもしばしば。
9月には後ろから衝突されて転倒して60代の女性が亡くなってしまう事故がありました。
16歳以下の購入禁止やスピード制限などあらゆる措置を取り始め規制を強めていましたが、走行できるのは自転車道のみとなります。
大きな公園以外、シンガポールのどこに自転車道があるのでしょうか?
このニュースで特に打撃を受けたのは、フードデリバリーサービスです。
歩道でもどこでも走行可能であるからこそ、迅速なデリバリーができる為、PMDの利用はサービス事業者としては不可欠でした。
また市場の成長性を感じてか、PMDを販売、またはレンタルする事業者も増えておりある一種の成長分野の芽を摘み取った感じは否めません。
先般、個人でPMDを使ってドキュメントデリバリーサービス(昔で言えばバイク便)を行っている40代後半の人を面接しました。
個人事業主で数年続けましたが、収入が不安定とのことと、雨の日にはスリップの恐れがあり、事業継続をすることを諦め、弊社顧客のオファーを受け、11月1日に入社しました。
その4日後にPMDがほぼ走行禁止になるのを予測していたかのように見事に転身されました。
また、これも最近51歳の方を面談しました。
長くIT業界に勤めていた方でしたが昨年の6月、業績悪化によるいわゆるリストラにより解雇されてしまいました。
その後正社員の仕事を探していますが面接にすら呼ばれない状況が続きました。
現在は夜のファストフードの仕事をパートタイムで続けながら正社員での仕事を探しているようです。
全盛期にはセールスコミッションを含め1万ドル近い給料をもらっていたが、現在は時給9ドルの仕事にしか雇用先がないのが現状です。
夜の仕事だけでは食べていけないので、昼のパートタイムも探しています。
失職してもシンガポールの一つの大きな利点は「家」があることです。
住宅持ち家率が9割近く有るため、貯蓄が十分にある場合、生活するには困らないこともあります。
一方ホームレス人口も年々増えており、最近の調査では1000人がホームレスとのことです。
もちろん字のごとく家もなく職に就けない方がシンガポールにも存在することがクローズアップさてれてきました。
また労働人口の高齢化に伴い、2012年に62歳から65歳まで再雇用することを検討するように義務つけられた。
この検討というのは、本人が「引退したい」と宣言する場合は再雇用をしなくても良いことになっています。
これが2017年から67歳まで引き上げられ、そのうち70歳までに引き上げられることが予測されています。
ただ、前述リストラされてしまった51歳の方のように、再雇用制度の前に、雇用を失うシニア層が増えています。
180日以内に正社員の仕事を見つけられる再就職率は現在30%台後半で推移していることから3人に1人はパートタイム以外の仕事を見つけられていない現状があります。
ただ、悲壮感があまりないのはある程度余裕がある証拠でしょう。
ただし、このまま続きますと社会問題にもなりかねませんので、政府としては6ヶ月以上失職している人を雇用した場合助成金を出すなど対処療法を繰り返しています。
弊社斉藤連載中Daily NNA 2019年11月14日号「東南アジア人「財」羅針盤」より抜粋
コラム執筆者
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1966年東京生まれ。大学卒業後、小売・流通チェーン「ヤオハン」に就職。1993年より香港本社へ転勤後一貫して人事に携わる。同社清算後も大手人材紹介会社「パソナ」のタイ現地法人社長を務めるなど複数社で人事・経営に携わる。
2006年、タイ国立マヒドン大学経営大学院にて経営学修士取得後、シンガポールにグッドジョブクリエーションズを設立、2014年に同社売却。
2014年6月、シンガポールに、プロの人事集団「プログレスアジア・シンガポール」を設立。真に東南アジアでビジネスを展開する中小企業をサポートすることを使命に再び起業の道を歩む。
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