第144回:引き続き「サーキット・ブレーカー」措置・3つのフェーズ
4月7日から続いていた、「サーキット・ブレーカー」(一時中止の意味)は一応期限を設けられておりました。
その終了日は6月1日、つまり5月いっぱい頑張れば、いわゆる「休業要請」が解除され、感染拡大に気をつけながら、経済活動が戻ると信じている方が筆者も含めて多かったです。
あるサイトでは6月2日の午前0時に合わせWEB上でカウントダウンセレブレーションを行うイベントを企画していました。
その浮かれた気分をぶち壊すが如く、経済・社会活動を徐々に再開していく3つのフェーズが5月19日に発表になりました。
フェーズ1ではまず、MTI(経済貿易省)がリスト化した企業のオフィスでの業務の再開、小中学校の再開を行っていくとのことです。
実質、学校の再開を優先させ様子を見ていくようです。
オフィスの解禁も全企業対象ではなく、可能な限りテレワークを推奨しています。
あるアンケートによりますと、シンガポール人の9割近くがテレワークを引き続き続けたいとの回答がありました。
その一番の理由に、通勤に要する時間、お金を節約できるとのことでした。
シンガポール人が仕事を選ぶ際に最も重要視していることは、給料ではなく、通勤に便利な「場所」という意外な結果も出ております。
弊社のスタッフの1名は、朝は早く来ていて絶対に遅刻はしませんが、残業指示がない場合、6時00分00秒に退社します。
「通勤」に関しては、かつて神奈川県から都内まで約2時間掛けて通っていた筆者としては、たかが30分程度の通勤時間が苦痛になっているのかなと思いました。
ただ、働き方に関しましては全世界で「ニュー・ノーマル」に移行していくのは間違いなく、果たしてそれで生産性が上がるのか、もしくは企業として収益を確保できるのか、等がこれからの課題になっていくと思われます。
さて、フェーズ2ですが、フェーズ1が落ち着いてから順に移行してくとのことで、飲食店内での飲食、一般小売店の再開、スポーツジム、家庭教師及び塾の再開を許可するものです。
一番の関心事は、では実際に「いつから解禁になるのか?で、政府の発表を待っておりました。
副首相兼財務大臣は26日のコメントで、なんと最長8月いっぱいまで、一般小売店と店内での飲食は許可しないとの方針を示されました。
なんとか5月いっぱいまでは、テイクアウトでお店の維持を踏ん張ってきた筆者の知人である飲食店経営者は「もう精神的にもたない」とぼやいていました。
一般小売店でもオンラインは求めているものの、やはりお店に来てもらい手に取って商品を見てもらわないと購買意欲につながらないとの意見もあり、また物流にかかる経費もばかにならないことから、検討中のところが多いのが実情です。
我慢を強いられている代わりに6月もシンガポール人と永住者の給料の75%を支給することが決定されました。
また一般小売店は開くまで75%の補償を最長8月まで続け、再開店後も当初は25%の補償を飲食業界と同様の50%に引き上げました。
これで一般小売業が感じていた差別感はなくなりました。
最後のフェーズ3では、イベントやコンサート、宗教的礼拝等集団行動が認められます。
但し群衆の数の制限は設けるとの指針がでております。
国境に関しては、感染輸入例をずっと「0」に押さえていますが、相互感染のリスクの少ない国・地域との門戸を開くようです。
その候補としてば、ニュージーランド、オーストラリア、ベトナム、台湾、韓国の5カ国です。
検査件数が少ない日本はまだ対象外です。
真のカウントダウンはいつになるのでしょうか・・・
弊社斉藤連載中Daily NNA 2020年5月28日号「東南アジア人「財」羅針盤」より抜粋
コラム執筆者
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1966年東京生まれ。大学卒業後、小売・流通チェーン「ヤオハン」に就職。1993年より香港本社へ転勤後一貫して人事に携わる。同社清算後も大手人材紹介会社「パソナ」のタイ現地法人社長を務めるなど複数社で人事・経営に携わる。
2006年、タイ国立マヒドン大学経営大学院にて経営学修士取得後、シンガポールにグッドジョブクリエーションズを設立、2014年に同社売却。
2014年6月、シンガポールに、プロの人事集団「プログレスアジア・シンガポール」を設立。真に東南アジアでビジネスを展開する中小企業をサポートすることを使命に再び起業の道を歩む。
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