第158回:コロナ対策制限緩和の第3期(フェーズ3)に向けて
早いもので、2020年も残すところ半月となってしまいました。
今年は新型コロナウイルスの影響で生活が一変してしまいました。
SARSが流行した03年は、シンガポールを含むアジア各国で感染が抑えられていましたが、今回は世界全体でコロナが猛威をふるい、北半球は冬場を迎え、感染拡大に歯止めがかかっていません。
今月14日の午後17時にリー・シェンロン首相が国民に向けて演説しました。
発表前から様々な憶測が出ており、さらなる経済支援があるのではないかという意見もありましたが、大方は経済・社会活動制限の緩和措置が解禁され、第2期から第3期に移行するという見立てでした。
発表は予測通り、市中感染がある程度抑えられているとのことで、第3期を今月28日にから開始することを正式に発表しました。
ほぼ同じ時期に日本の菅首相がGO TO トラベルを今月28日から来年1月11日までに停止することを発表したのとは対照的な動きでした。
第3期では、グループ活動や店内飲食の人数制限を現在の最大5人から8人に引き上げることが決まりました。
これは飲食業を営む方々には朗報です。
5人席が8人席になることでバッテン・マーク(X)の席がなくなり、食事がしやすくなりその分売上が増えるからです。
ある飲食経営者は座席が25%削減されているのだから、家賃も25%カットするように家主と交渉していましたが、ようやく今回の発表でほぼフル回転できることになります。
娯楽施設での人数制限も、収容能力が50%から65%に拡大。
主に映画館や劇場での人数制限が緩和されることにより、周りの商業施設や飲食店への経済的波及効果が期待できます。
また、宗教施設及び屋内ライブパフォーマンス施設の人数制限を50人ずつのグループ分けをすることにより、最大250人まで集めることが可能になります。
これはかなり踏み込んだ措置かと思います。
というのも、マレーシアやインドネシアではモスクなど宗教施設での集団感染が広がったほか、日本や韓国では夜のライブハウスで感染拡大が起きたからです。万が一感染者が増えれば、またすぐに逆戻りするかもしれません。
その他、企業にとって気になるポイントは、出勤制限があるかどうかです。
これは14日時点では特に発表されませんでしたので、引き続き現状維持(在宅勤務がデフォルト)で全社員の50%を上限に職場で勤務することが求められています。
このコラムでも数回に渡り「在宅勤務」の件に触れていますが、シンガポール人は通勤がなくある程度自由に勤務できる在宅勤務を好む傾向があり、オフィス勤務については、現状続けばよいと感じているシンガポール人は多いのではないでしょうか。
ただジョセフィン・テオ人材開発相は15日、出社規制を緩和する可能性を示唆しました。
今後の発表が注目されます。
またシンガポール政府は、巷で話題になっている米ファイザー社が開発したワクチンの使用をアジアで初めて承認しました。
首相も自ら接種することを表明しており、医療従事者と高齢者を優先的に実施するとのことです。
一番驚いたのは、国民や永住権者だけでなく、居住外国人も含めて全員接種に関わる費用を「無料」にしたことです。
やはり外国人労働者の感染対策が一番の課題であるため、国内の居住者全員を対象にワクチンを投与できる体制を整えることで、社会全体の免疫力を高めようとしているのでしょう。
企業としては、第3期が始まっても引き続き防疫体制を崩さず、週ごとのシフトを組むなどしながら、業績を維持していく必要があります。
もちろんマスクの着用は引き続き「ニューノーマル」として続ける必要があります。
今年は大変な年でしたが、来年が良い年であることを祈念いたします。
来年も人「財」羅針盤を宜しくお願い致します。
弊社斉藤連載中Daily NNA 2020年12月17日号「東南アジア人「財」羅針盤」より抜粋
コラム執筆者
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1966年東京生まれ。大学卒業後、小売・流通チェーン「ヤオハン」に就職。1993年より香港本社へ転勤後一貫して人事に携わる。同社清算後も大手人材紹介会社「パソナ」のタイ現地法人社長を務めるなど複数社で人事・経営に携わる。
2006年、タイ国立マヒドン大学経営大学院にて経営学修士取得後、シンガポールにグッドジョブクリエーションズを設立、2014年に同社売却。
2014年6月、シンガポールに、プロの人事集団「プログレスアジア・シンガポール」を設立。真に東南アジアでビジネスを展開する中小企業をサポートすることを使命に再び起業の道を歩む。
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