第142回:新型コロナウィルスに関する最新規制事項、CBが6月1日に延長に

実はこの記事を書いている4月21日夕方、シンガポールのリー・シェンロン首相の演説が始まりました。

いわゆるフェイクニュースと言うか、首相がロックダウンを発表するとかのデマの情報が多いので半信半疑でしたが、17時に演説が始まりました。

演説直前までは、原稿で「今回のサーキット・ブレーカー(CB)は5月4日までと期間を設けておりますが、ワーカー宿舎のドミトリーでの大量感染者がほとんどであるものの、感染者の抑制にはつながっていないことからもう2週間延長の声がちらほら聞こえてきています。」などと書いていましたが、なんと6月1日まで4週間延長するとの発表でした。

市中感染は20件台と落ち着いているものの、総感染者数がドミトリーを宿舎としている建設現場で働いている南アジアからの出稼ぎ労働者の感染者が爆増して、感染者数がASEAN諸国NO.1になってしまった事実を深く受け止めた結果でしょう。

そもそもサーキット(回路)ブレーカー(遮断器)とは経済用語で株や先物取引が著しく大きく変動した時に相場を安定させるための「一時中断」のことですが、ロックダウンという言葉より経済国家であるシンガポールっぽい言葉選びで、欧米諸国の外出禁止令よりはある程度の自由は与えています。

シンガポール人は何でも略すのでCBと呼んでいます。

総感染者数は4月21日の段階ですでに9,000名を超えており、この記事を書いている最中にでも1万人を超えてしまうかもしれません。

ベトナムやタイにいる友人からは「おいおい、シンガポール大丈夫か?」と心配する連絡をもらいました。

NUH(シンガポール国立大学病院)の拡張工事建設現場で働いている南アジアからの労働者が集団感染しましたが、シンガポール国民の為の病院作りで、自分たちがその犠牲になっているのはなんとも皮肉です。

今回は、建設業界で働くWPワーカーだけでなく、Sパスホルダーまでも14日間外出禁止とする、自宅待機措置(SHN)が義務付けられることになりました。

Sパスで働いている日本人はそれほど多くはありませんが、筆者の知り合いでは大手ゼネコンで現場通訳をしている日本人男性を知っています。

その方も外出禁止になっていると思います。

また昨日の発表では感染していなくても全ての建設をストップするとの措置も取ることになりました。

とにかくワーカーの感染を食い止めないと場合によっては20件台で抑えている市中感染が増えかねません。

一般の新たな規制としては、バブルティーやアイスクリーム等デザートのみを提供しているお店、ヘアーサロンや床屋も閉鎖となりました。

発表後発令が同日23時59分という相変わらずの「朝令暮改」的な措置です。

ただ、一般企業はテレワークを既に実施していますのである程度(通常の75%くらい)は仕事ができますが、配達や持ち帰りのみしか認められていない飲食業は、ただでさえ外出自粛が広がっていてお客さんがあまり来ない中、一日の売上が3分の1になったとの声を聞きます。

もし5月いっぱいまで延長したらお店を維持すること、つまり従業員に給料を払えることができなくなるとの悲痛の声を聞くケースも増えてきました。

とにかく決まってしまった以上、6月1日までなんとか持ちこたえて行くしかありません。

弊社斉藤連載中Daily NNA 2020年4月23日号「東南アジア人「財」羅針盤」より抜粋

コラム執筆者

斉藤 秀樹
斉藤 秀樹プログレスアジア 代表取締役
1966年東京生まれ。大学卒業後、小売・流通チェーン「ヤオハン」に就職。1993年より香港本社へ転勤後一貫して人事に携わる。同社清算後も大手人材紹介会社「パソナ」のタイ現地法人社長を務めるなど複数社で人事・経営に携わる。
2006年、タイ国立マヒドン大学経営大学院にて経営学修士取得後、シンガポールにグッドジョブクリエーションズを設立、2014年に同社売却。
2014年6月、シンガポールに、プロの人事集団「プログレスアジア・シンガポール」を設立。真に東南アジアでビジネスを展開する中小企業をサポートすることを使命に再び起業の道を歩む。