第171回:入国申請開始に伴う人事施策
6月23日にMOH(保健省)から、新型コロナウイルス感染の高リスク国・地域からの入国者に義務付けている待機措置の期間を転職するという通達がありました。
待機期間は同日午後11時59分以降、従来の21日間から14日間に変更されました。
高リスク国・地域には日本も含まれます。政府はよく突然発表を行うので即日施行にはもう慣れましたが、それにしてもすさまじいスピード感です。
短縮の理由は、変異株の潜伏期間が14日以内であることを証明できたためとのことでした。
また一時、チャンギ空港を中心に大きなクラスター(集団感染)が発生しましたが、現在は感染経路をほぼ把握できています。
ワクチン接種率も上昇しており、感染リスクが下がっている状況を考慮したものと思われます。
保健省はこのほか23日に、入国後3日目、7日目、11日目に自己検査キットを使って入国者に即時抗原検査(ART)を受けてもらうと発表しました。
これまでは6歳以下の幼児は、空港到着時と待機措置終了前のPCR検査を免除されていましたが、今回の発表では免除対象が2歳以下となり、3歳以上は検査を行うことも決まりました。
高リスク国・地域からの入国者の待機期間については、5月上旬に従来の14日間から21日間に延長されていました。
14日間の待機措置を受ける予定で入国したものの、突然21日間に延長された方も数多くいました。
もう少しで待機措置を終えて外に出られると思った直後に一週間延長となり、心が折れかかったと話す人もいました。
MOM(人材開発省)が5月、高リスク国・地域からの就労ビザ保有者の入国を規制すると発表したことも、多くの人に影響を与えました。
入国許可証の新規申請の受け付け同月7日に停止されました。
既に入国の認可申請や認可取得を済ませていた方も5月11日より入国ができなくなり、同日に渡航予定だった方は日本の空港に向かう直前で足止めを食らってしまいました。
シンガポール行きを足止めされた方は、主に新規赴任の駐在員とその家族でした。
ただ小さい子供がいるご家族では、21日間という長い待機期間がある時点で入国を断念するケースも増え、駐在員も家族を帯同するか悩む例がみられました。
そして迎えた6月23日。前述のように待機期間が21日間から14日間へと「元通り」になり、そろそろ入国申請も再開されるのではという希望的観測を持つ方が増えてきました。
発表は7月入ってからかなと筆者も思っておりましたが、週末に入った6月25日午前2時ころにMOMから突然メールが届きました。
入国申請を済まされた人で、14日間の待機期間のホテル滞在費用や待機措置終了直前のPCR検査費用をMOMに支払った場合、入国申請を認めるとの通達でした。
驚いたのは、入国できるのは7月1~5日の5日間で、入国申請の期限は6月28日(月)正午までというものでした。
入国を予定していた対象者はある程度準備はしていたものの、慌てて航空券を予約したり、出国前72時間以内のPCR検査を手配したりする必要がありました。
対象者を受け入れるシンガポール側の人事担当者も土日に出勤して対応する必要がありました。
中にはあまりにも通達が突然すぎたため社内で調整ができず、入国のタイミングを逃してしまった方も出てきました。
猶予期間もなく、政策・措置を突然発表するというのは、ある意味スピード感があってよいことかもしれません。
対応する人事担当者は、措置変更にすぐ対応できるよう準備しておく必要があります。
非常時ですので「知らなかった」では済まされないと思います。
新規で入国申請をしたいという人は、日本人だけでなく世界中から数多くいるため、本格的に申請受け付けが再開されれば申し込みが殺到することが予測されます。
人事担当者は、入国申請の措置変更が突然深夜に発表されることも考慮に入れ、赴任する駐在員とその家族の入国希望日をあらかじめ決めておく必要があります。
特に幼稚園児や小中学生を一緒に帯同する場合は、新学期が始まる前の夏休み期間中に入国し、14日間の待機措置を終えることを見据えて入国申請を行う必要があります。
深夜2時まで働いているMOM職員は大変かと思いますが、市中の感染対策を十分に行いつつ、徐々に新規の入国許可を認めてほしいものです。
弊社斉藤連載中Daily NNA 2021年7月1日号「東南アジア人「財」羅針盤」より抜粋
コラム執筆者
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1966年東京生まれ。大学卒業後、小売・流通チェーン「ヤオハン」に就職。1993年より香港本社へ転勤後一貫して人事に携わる。同社清算後も大手人材紹介会社「パソナ」のタイ現地法人社長を務めるなど複数社で人事・経営に携わる。
2006年、タイ国立マヒドン大学経営大学院にて経営学修士取得後、シンガポールにグッドジョブクリエーションズを設立、2014年に同社売却。
2014年6月、シンガポールに、プロの人事集団「プログレスアジア・シンガポール」を設立。真に東南アジアでビジネスを展開する中小企業をサポートすることを使命に再び起業の道を歩む。
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