第8回 東南アジアにおける人事: その8 東南アジアの人口構造

敬老の日にふと日本のニュースを見ていると、人口統計の発表がありました。

日本人の寿命は女性で86 歳、男性が80 歳と双方ともに80 歳台になり、女性は長寿世界一になりました。寿命が伸びた理由としては、がんや心臓病などの病気での死亡率が下がったことが挙げられていました。

また平均年齢は45.7 歳となり、2020 年には50 歳台になると予測されていました。

一番衝撃だったのは、65 歳以上の人口が既に全人口の25%になっていたことです。少子高齢化、人口減少は以前より指摘されていたことですが、高齢者が全体の1/4を占めるグラフを見ていると、「これから日本はどうなるのだろう?」と思いました。

日本にいる筆者の友人たちを見ると、だいたい子どもは1人で、2人以上はそれほどいません。

昔の日本は20 代で仕事を始め、結婚して30 代で子ども2人を作り、マイホームを40 歳までに買うという一種の「定番」がありました。また「サザエさん」のような大家族で住み、近所とのつながりも多かったと思いますが、今は核家族化し、隣に誰がいるかわからないといったような少々冷めた社会になっていると感じます。

さて、東南アジア諸国連合(ASEAN)の人口については全域で約6億人、15 年後には7億人に達すると言われています。

筆者の配偶者はインドネシア国籍の華人であり、6人兄弟姉妹の5番目です。両親は既に他界しているので長兄が家族の「長」となっています。その下に4姉妹がいますが、子どもの数は(筆者の家庭を除いて)3~5人が当たり前となっています。そ

の中には実際に血が繋がっていない子もいて、生まれた直後に経済的な理由により育てられない家庭から引き取ったというケースもあります。とにかく子どもが1人という家庭はインドネシアではほとんど見かけません。

そのような背景からか、ASEANの中で最大の人口を抱えるのがインドネシアです。最新の人口統計を見てみると、約2億5,000 万人とASEAN全域の約4割を占めています。次にフィリピンが約9,500 万人、ベトナムが8,800万人となっています。

ベトナムに行きますと、名物と言われるほどのオートバイの多さが目につきます。車が高価なこともあり、また公共交通機関も発達していないことから、移動手段として利用されています。

インドネシアの実家(スマトラの地方都市)の人たちは、昔は10 歳くらいから既にバイクを運転をしていたと言っていましたが、確かにどう見ても未成年というか少年少女が運転している姿を東南アジアではよく目にします。

また1台のバイクに3人、すごいのは4人(大人の間に子どもが2名挟まっている状態)乗りをたまに見かけます。それだけ子どもが多いことが垣間見られます。

ASEAN諸国の人口は、ベトナムの次にタイが約7,000 万人、ミャンマーが約4,800 万人、マレーシアが約2,900 万人、カンボジアが約1,400 万人と続きます。マレーシアに関しては国土が広い(ボルネオ島のサバ州も含む)割には人口が少ないイメージを受けます。

最後に人口1,000 万人以下の、ラオス約630 万人、シンガポール約540万人、ブルネイ約40 万人と続きます。

人口ピラミッドを見てみますと、シンガポールを除き綺麗なピラミッド型で下が上を支える構造になっています。平均年齢は、日本の46 歳近辺に対し、シンガポールは38歳です。

ちなみに東南アジアではありませんが、中国は37歳で日本より約10 歳も若いのです。シンガポールを除く東南アジアの平均年齢は、人口順にインドネシアが28 歳、フィリピンが23 歳、ベトナムが28 歳、タイが少々高めで34歳、ミャンマーが29 歳、マレーシアが27 歳、カンボジアが27 歳です。若年層人口が多く、将来的に購買層が拡大することが考えられます。

現在は政情も安定していることから、東南アジアでの直接投資は今後ますます増えてくることが予測できます。

また人事的には有望な大学出の学生、とりわけ日本語を勉強した学生を獲得するチャンスでもあります。

Daily NNA 2014年9月18日号より抜粋

コラム執筆者

斉藤 秀樹
斉藤 秀樹プログレスアジア 代表取締役
1966年東京生まれ。大学卒業後、小売・流通チェーン「ヤオハン」に就職。1993年より香港本社へ転勤後一貫して人事に携わる。同社清算後も大手人材紹介会社「パソナ」のタイ現地法人社長を務めるなど複数社で人事・経営に携わる。
2006年、タイ国立マヒドン大学経営大学院にて経営学修士取得後、シンガポールにグッドジョブクリエーションズを設立、2014年に同社売却。
2014年6月、シンガポールに、プロの人事集団「プログレスアジア・シンガポール」を設立。真に東南アジアでビジネスを展開する中小企業をサポートすることを使命に再び起業の道を歩む。