第106回:人事担当者のお悩み:その28 起算日での揉め事

最近出張でチャンギ空港に行きました。その際に大きなドリアンの形をしたような建設中の商業施設が見えてきました。

帰ってきて調べてみたところ、チャンギ空港を管轄運営するチャンギ・エアポート・グループ(CAG)による大型複合商業施設「ジュエル・チャンギ・エアポート」が2019年の初頭に開業するとのことです。

なんでチャンギに空港にショッピングセンター?と疑問を感じますが、意外と東部方面に住んでいる方はチャンギ空港で買い物をするようで、地元客と観光客双方の集客を狙っているようです。

日系だけでなく世界のブランドが集まることが予想できます。

「チャンギ」ブランドは世界でも有名ですが、ターミナル5も建設し、商業施設も作り、空港を単なる旅客の為でなく、空港を一つのエンターテインメントの場とすることに力を入れるようで、今後の展開が楽しみです。

さて、最近はMOM(人材開発省)関連のニュースが多く、就労ビザ関連の記事が続いておりました。

年末が近づいているのか、既に策が全て出てしまったのか分かりませんが、「平和」な時期が続いています。

今回の人事担当者の「お悩み」は中途社員の起算日についてです。

とある日系商社の方から、中途採用したローカルスタッフの試用期間3ヶ月が終了した際に付与されるべき有給休暇日数が少ないとの指摘を受けたのこと。

この会社の就業規則を見てみますと、試用期間は3ヶ月で、試用期間後に正社員(英語ではConfirmed Employee)となることにより、有給休暇「取得」の権利が発生します。

7月1日に入社し10月1日に正社員になりました。

この会社の年間有給休暇日数は1月1日から12月31日の1年間で14日となっております。

従いまして、会社としては14日に12分の3を掛け日割り計算で3.5日を支給するのが普通と思っていましたが、当該新入社員は、「入社日」から起算しないとおかしいと主張しました。

確かに付与されるのは「試用期間後」ですが、どこから起算するのかは明確化されていません。

EMPLOYMENT ACT(雇用法)では、入社後3ヶ月に最低7日付与しなければならないとありますが、適用者は2,500ドル以下の社員で、当該社員は4,000ドル以上の社員ですので、雇用法の適用にはなりません。

雇用契約書と会社の「憲法」である就業規則にその部分が明確化されていない為、労使双方の「揉め事」に発展しています。

当該社員の常識では、試用期間とはいえ、「入社」したのだから、入社日を起算とすべきで、前の会社もそうだったと言い張りました。

つまり14日に12分の6の7日付与されるべきだとの主張です。

この部分につきましては特に法令化しておらず、会社の裁量によるところで、「前の会社」は「前の会社」であって、「今の会社」の適用が、どうかがポイントとなります。

結果的には、規定に書いてなかったが、雇用法の延長で雇用契約を結んでいるので、会社としては12月31日まで3.5日を支給することに決めました。

その後会社は就業規則を改定し、期中に中途入社した場合は正社員採用決定時に有給休暇が日割り計算により支給されると明記されるようになりました。

12月には大抵の企業が1ヶ月ボーナス(AWS)を支給します。

こちらも入社日を「起算日」とするのか、試用期間後、正社員になってからカウント開始にするのかを明確化すべきです。

「揉め事」をなるべく回避するためには、変化に対応できる就業規則の改定が必要となってきます。

弊社斉藤連載中Daily NNA 2018年10月18日号「東南アジア人「財」羅針盤」より抜粋

コラム執筆者

斉藤 秀樹
斉藤 秀樹プログレスアジア 代表取締役
1966年東京生まれ。大学卒業後、小売・流通チェーン「ヤオハン」に就職。1993年より香港本社へ転勤後一貫して人事に携わる。同社清算後も大手人材紹介会社「パソナ」のタイ現地法人社長を務めるなど複数社で人事・経営に携わる。
2006年、タイ国立マヒドン大学経営大学院にて経営学修士取得後、シンガポールにグッドジョブクリエーションズを設立、2014年に同社売却。
2014年6月、シンガポールに、プロの人事集団「プログレスアジア・シンガポール」を設立。真に東南アジアでビジネスを展開する中小企業をサポートすることを使命に再び起業の道を歩む。