第118回: 改正雇用法による変更点(その2:残業手当に関して)

 

先週チャンギエアポートに隣接するジュウェル・ショッピングセンターがオープンしました。

筆者はプレオープンの招待を受けて視察に行ってきました。

ターミナル1と3の間にあり、中央部には、緑に囲まれた人口の滝というか水を天井から落とす演出があり、現地の方々が写真を取りまくっていました。

日系の小売、飲食店もかなり進出しており、弊社が担当している小売や飲食に関しては、プレオープンというのに店内は人で混み合っていました。とくにポケモンを扱うお店は長蛇の列が出ており入場制限を行っているほどでした。

特に飲食業では高齢の方が手を震えさせながら食べ物を運んでいる姿を見受け、全体的に「人手不足」は否めません。

高齢の方の再就職率をアップさせようと政府は補助金を出したりしていますが、慣れない手付きで手を震わせながら白髪の方が働いている姿を見ますとジョブのミスマッチを感じます。

またこの従業員も自分の年の半分以下のスーパーバイザーに使われる現状、プライドを捨ててまで仕事を続けていけるのだろうかと、人混みの中でふと思いました。

政府としてはとにかく飲食も含め外国人の流入を防ごうとしていますが、果たしてそれで成長を維持できるのでしょうか?

さて、前号に続き改正雇用法について述べていきます。

飲食業や小売業が気にしている大きな案件として「残業手当の支給」があります。

改正前は雇用法適用者が限られており、雇用法適用者が2,500ドル以下の社員で産業界からの反対もあり、残業手当支給のキャップ(上限)を2,250ドルと定めており、時給単価が11.80ドルを超えないよう調整されていました。

つまり給料が2400ドルの社員の残業手当は12,5ドルを超える計算になりますがリミットがあり、11,80でした。

まず大前提としては改正雇用法の適用が「全ての従業員」に拡充されたことで、4500ドル以上を超えるホワイトカラー層も対象になったことです。

また、従来は上述の通り月額2,250ドルまでを上限としていましたが、これが2600まで激増しました。

2,600ドルのホワイトカラーの人の従業員の残業時給単価は13.64ドルとなり、これに残業時間トータルに1.5倍から2.0倍を掛けて全体の残業手当を支給します。

今までは採用時に2500ドルの社員を採用すると残業手当が発生してしまうため、わざと2,550ドルに給料を設定したり、50ドルの通勤費等を付け加えたり調整を行ってきました。

この変更はホワイトカラー層には恩恵が与えられますが、ブルーカラー層には変更がなくそのままです。

MOMにブルーカラー層の定義を聞きましたところ、シフト業務を行っている小売業や飲食業は「ブルーカラーでいい」との返答をもらいました。

つまりブルーカラー層に関しましては変更がありません。

弊社の顧客もこの点大変気にされており、ブルーカラー層には変更がないとのとことで胸をなでおろしています。

この改正雇用法の残業手当の改正は、今までは産業界の要望に従い上限を設けていましたが、これを撤廃し、100ドル引き上げることにより、10万人以上の従業員がこのアップの恩恵を受けると相変わらず「数の成果」を強調しています。

日本でも「働き方改革」で従業員に対して柔軟な対応を示していますが、シンガポールでも徐々に従業員側の保護の動きが次々と出ています。

「えっ知らなかった」となる前にMOMからの情報に関しては随時チェックする必要があります。

弊社斉藤連載中Daily NNA 2019年4月25日号「東南アジア人「財」羅針盤」より抜粋

コラム執筆者

斉藤 秀樹
斉藤 秀樹プログレスアジア 代表取締役
1966年東京生まれ。大学卒業後、小売・流通チェーン「ヤオハン」に就職。1993年より香港本社へ転勤後一貫して人事に携わる。同社清算後も大手人材紹介会社「パソナ」のタイ現地法人社長を務めるなど複数社で人事・経営に携わる。
2006年、タイ国立マヒドン大学経営大学院にて経営学修士取得後、シンガポールにグッドジョブクリエーションズを設立、2014年に同社売却。
2014年6月、シンガポールに、プロの人事集団「プログレスアジア・シンガポール」を設立。真に東南アジアでビジネスを展開する中小企業をサポートすることを使命に再び起業の道を歩む。