第73回:人事担当者のお悩み:その23 内部告発されたのですが・・・

最近の国際ニュースでは、相変わらずアメリカのトランプ大統領の「パリ協定脱退」が大きく取り上げられました。

「Make America Great Again」を掲げて、パリ協定は「アメリカの為になっていない」とのことで公約にあげて当選した以上、あとに引けなくなってしまったのかもしれません。

一方環境問題に真剣に取り組んでいる欧州各国はアメリカのパリ協定脱退に大失望し、またアメリカ国内でもアップリやアマゾンなどGreatなカンパニーが撤退に対しておもむろに反対意見を述べています。

フランスのマクロン新大統領は「Make Our Planet Great Again」とブラックジョークとも言える発言をしてアメリカに対抗意識を燃やしています。

インドやスリランカ南アジア方面では異常とも言える高気温と大洪水が発生していますし、そもそもシリアの危機は、気候変動による大干ばつで食料が一般庶民に安く手に入らなくなって反政府活動に繋がったという背景もあります。

東南アジアでも、平均気温が軒並み最高記録を更新しており、また今日6月7日も外出しましたが特別に暑く感じました。確実に地球は温暖化に向かっていると感じます。

さて、今回のお悩みは「内部告発」されたことに対してどのような対応をしたら良いのかの2つのケースを紹介します。

最初は、とある製造業の営業担当のケースです。

この若手営業担当の社員は社用車を使い日々営業活動を行っています。社の駐車場に戻ってきた所、急に眠気に襲われ、「少しくらいなら」と思いうたた寝をしてしまいました。

そこに運悪く同僚たちが通りかかり、写真を数枚撮られました。

 

最初はからかうつもりだったようですが、それを上司に「内部告発」されました。

大きな規律違反でないものの、そのような激写写真はこのご時世瞬く間にSNS等で世界に広まります。

激写された社員は、すぐさま人事担当者に相談をした所、まずは、担当上司に説明責任を果たすこと、また、ことが大きくならないよう、「火消し」に回ることを言われました。

 

当該人事担当者は、私に「内部告発」が起こってしまったらどうしたら良いかの相談をしてきました。

そもそも「内部告発」が発生するのは、社員に不満・不平があり、社内ゴシップや噂が蔓延する組織です。

組織の成長度から鑑みますと「官僚的で機能不全な組織」となっている可能性があります。

これを「意欲的な組織」、「直感的な組織」「創造的な組織」と昇華させて行くのには、人事システム(評価+賃金)を見直すか、社員の意識調査を第三者機関に外注し経営面での改善点を探ることをアドバイスしました。

 

次は、MOMへの内部告発です。これも労使間での決め事(雇用契約)に反しているケースがほとんどで、最近では「不当解雇」についてもMOMに相談されるケースが増えています。

このケースは飲食業とのケースです。

人事担当者がMOMの担当官の査察を受け、責任者の改善を求める書類にサインをしています。

弊社は当該企業の依頼を受け、新規で就業規則と雇用契約書を作成しています。

前作られた条文の中には明らかに従業員に不利になるような事柄、特に勤務時間に関しての「内部告発」があり、手元にあるMOMからの査察状を見ますと、社員からは週に44時間以上残業なしで働かせられているとの告発を受け査察が入りました。

44時間以内で労務管理をするのはもちろんのこと、シフト制を組むなど新規の就業規則を運用し抜本的な人事改革が必要とのアドバイスをしました。

 

日本でも「働き方改革」が労使間のテーマになっていますが、労基局の査察が入らないよう、先にタイムカードを打刻してから残業をするという本末転倒なことをしているとの報道もあります。

労使間のバランスはどこの国でも重要ですが少なくとも誰もがワークライフ・バランスを保ちつつ朝起きた時に「さあ会社に行くぞ」というような内的モチベーションになるような組織構築が必要不可欠です。

 

弊社斉藤連載中Daily NNA 2017年6月8日号「東南アジア人「財」羅針盤」より抜粋

コラム執筆者

斉藤 秀樹
斉藤 秀樹プログレスアジア 代表取締役
1966年東京生まれ。大学卒業後、小売・流通チェーン「ヤオハン」に就職。1993年より香港本社へ転勤後一貫して人事に携わる。同社清算後も大手人材紹介会社「パソナ」のタイ現地法人社長を務めるなど複数社で人事・経営に携わる。
2006年、タイ国立マヒドン大学経営大学院にて経営学修士取得後、シンガポールにグッドジョブクリエーションズを設立、2014年に同社売却。
2014年6月、シンガポールに、プロの人事集団「プログレスアジア・シンガポール」を設立。真に東南アジアでビジネスを展開する中小企業をサポートすることを使命に再び起業の道を歩む。