第177回:「カテゴリーⅡ」への変更に伴う対策について

シンガポール政府が先月末に発表した人口年次統計によると、2021年6月末時点の総人口は前年同月比4.1%減の545万人となりました。昨年は減少幅が0.3%にとどまっていました。
今回のマイナス幅は1950年の統計公表開始以来最大の減少幅となりかなりインパクトがありました。

シンガポールの出生率は世界最低水準で、国民の人口が減っている要因の一つに挙げられます。
新型コロナウイルスによる入国制限で外国人の入国ができなかったことや、昨今の就労ビザの要件の厳格化で外国人が仕事をする場を失ってしまったことも大きな原因かと思います。
実際に「外国人」は11%と大幅に減少しました。

人的資源を生かして成長してきたシンガポールにとって、人口減少は将来的にも大きなダメージとなります。政府が2013年1月に発表した「人口白書」では、30年までに人口を650万~690万人まで増やし、国を持続的に発展させていく計画でした。

このうち約4割を外国人が占めるとの予測を示したことから、外国人の受け入れ数を増やすべきではないなどと国民の間で波紋を呼びました。現在外国人の割合は3割弱です。
今回の人口統計の結果を受け、政府は人口白書をどう見直していくのか気になります。

さて、政府は新型コロナウイルスの感染対策の一環として、これまで厳しい入国措置を取ってきました。世界の国・地域を「カテゴリーⅠ~Ⅵ」(Ⅰが最も緩い)に分けて入国規制を適用しており、日本はこれまで「カテゴリーⅢ」に分類されていました。

一時は、希望日での入国が認められればラッキーというほど、「入国許可証」の申請が困難を極めていました。日系企業担当者がパソコンとにらめっこしながら何度もオンライン申請するなど、限られた入国の枠を「椅子取りゲーム」のように競い合う状況が続いていました。

この「カテゴリー」に関して、今月2日の土曜日夕方、大きな発表がありました。最近は、毎週のように金曜日の夕方になると政府からコロナ対策関連の発表があったため、先週金曜日の1日は何の発表もなくホッとしておりましたが、2日に発表があったので驚きました。

入国規制のカテゴリーで、6日深夜から日本は「カテゴリーⅢ」から「カテゴリーⅡ」に引き上げられるとの内容でした。日本以外にも、これまで「カテゴリーⅢ」に該当していた11カ国が「カテゴリーⅡ」に「昇格」しました。日本については、専門家もその理由が分からないほど感染者数が急激に減り、先ごろ全国で緊急事態宣言も解除されました。

これがシンガポールの入国規制に影響したのかどうか分かりませんが、感染者が減った国からの入国者に徐々に門戸を開く方向に舵を切ったことがうかがえます。日本からの渡航者は「カテゴリーⅡ」になったことで、隔離期間が14日から7日に短縮されました。

ワクチン接種2回目とその後2週間経過していることが条件ですが、日本でも接種率はどんどん上がっており、また海外に行く方はワクチン接種証明書も以前に比べればスムーズに取得できるようになってきました。

また入国申請もかつては全く取れない時がありましたが、今は枠が埋まっていなければ一か月以内どこでも申請できるようになりました。大きな違いは、今までは政府指定の隔離先ホテルに14日間でしたが、新規でシンガポールに入られる方は、自分でホテルを予約しなければならなくなりました。

今後、日本からシンガポールに渡航を計画されている方にとっては「朗報」ですが、受け入れ担当者は食事のことや送迎のタクシーの予約などを手配しなければならず、できれば「このまま「カテゴリーⅢ」でよかったのにという声も聞きます。

弊社斉藤連載中Daily NNA 2021年10月7日号「東南アジア人「財」羅針盤」より抜粋

コラム執筆者

斉藤 秀樹
斉藤 秀樹プログレスアジア 代表取締役
1966年東京生まれ。大学卒業後、小売・流通チェーン「ヤオハン」に就職。1993年より香港本社へ転勤後一貫して人事に携わる。同社清算後も大手人材紹介会社「パソナ」のタイ現地法人社長を務めるなど複数社で人事・経営に携わる。
2006年、タイ国立マヒドン大学経営大学院にて経営学修士取得後、シンガポールにグッドジョブクリエーションズを設立、2014年に同社売却。
2014年6月、シンガポールに、プロの人事集団「プログレスアジア・シンガポール」を設立。真に東南アジアでビジネスを展開する中小企業をサポートすることを使命に再び起業の道を歩む。