第41回 人事担当者のお悩み その1 遅刻のマインドをどう直すか

先日とあるお客様からの人事相談を受けました。

社長交代人事により最近シンガポールに赴任をされてきました。もともと日本では管理部門のエクスパートで、今回は海外子会社の内情を調査し問題点を洗い出しそれを解決していくという任務を背負っておりました。

この手の相談でよくある傾向としては、日本から海外子会社を任される責任感と高揚感から「燃える思い」で赴任をしてきたものの、長年居座っているローカルスタッフは、また新しいニホンジンがやってきた等のマインドセットで誰が来ようと自分たちの権益には関係ないという態度をとりがちです。

私も日本の大手人材派遣会社のタイ社長に就任した際には、前任のタイ人MDの代わりに「立て直し」を任され赴任をしましたが、初日から「???」が続きました。まず時間に関するマインドの違いです。

9時就業開始でありましたが、9時に仕事を始めている人は社員の半分、9時過ぎに来て外で買ってきた油で上げた豚肉を頬張り、その後トイレに行き9:30頃ようやく仕事に就くと思いましたが、新聞を広げて芸能の話を始める。。。

当該お客様も同じようなお悩みを持っており、雇用契約には9時から18時と書いてありますが、9時には誰も来ていなく新社長が朝の電話番を行っている有様でまた出社してきたと思ったら、トイレに入り出てこない。電話を取るのは「損」と思っているのですかと聞かれました。

組織の健全性をチェックする上で、弊社のような人事コンサルティング会社が第三者の立場で社員にヒアリングをする事があります。

数社のケースを見ていますと、会社側と社員側との間でギャップがあることが伺えます。会社側は「創造的な組織」と思い、何も言わなくても何をやるべきか分かっており、常に会社、自分の仕事に誇りを持っており、積極的に「貢献」する社員が組織を構成していると思っています。

一方、社員側は「ストレスに満ちた組織」と思い、いわゆる日々のルーティンワークをこなすだけで、「いかにやらないか」のマインドで、社内で電話がなっても「なるべく取らない」マインドが蔓延っており、倦怠感、消極的な空気が広がっている組織です。

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このお客様からは「シンガポールは遅刻をするのは当たり前なのですか?」と聞かれました。勿論回答は「NO」です。

9時から就業開始で9時過ぎに来るような社員は基本的には仕事ができません。日系企業は時間に厳しすぎるので嫌だというローカルスタッフもいるのは確かですが、どこの会社でも「時間を管理できない人は全てを管理できない」ということで管理者にはなれません。

5分遅刻したスタッフを社員の前で恫喝したケースがありましたがそのスタッフはその日で退職しました。遅刻をしたことは悪いことですが、人前で怒られたことに恥をかき退社につながったケースです。

ではどのようにすれば遅刻を防げるのか。恫喝のような北風、恐怖を与えることは東南アジアでは効果がありません。そこまでストレスを感じて仕事(会社)にしがみつく必要がないからです。

理想としては「創造的な組織」を作り、社員が朝起きた時早く会社に行かなければと思うようになることです。

私の場合は遅刻が多いスタッフには時間通り来ているスタッフに対して不公平ということと朝飯パーティーを始めるのなら就業開始時間前に全てをすませることを別室に呼び説いていきました。

その結果雨が振りそうな時は早めに出社するようになり、今では部下数名を持つ管理者になりました。そのスタッフにも同じような教育をしていると信じます。

ただ、あまりにも時間にこだわり過ぎますと「成果」が見えなくなりますので、フレックス・タイム制の導入により時代にあった働きやすい環境を用意することを肝要です。

Daily NNA 2016年1月28日号「東南アジア人「財」羅針盤」より抜粋

コラム執筆者

斉藤 秀樹
斉藤 秀樹プログレスアジア 代表取締役
1966年東京生まれ。大学卒業後、小売・流通チェーン「ヤオハン」に就職。1993年より香港本社へ転勤後一貫して人事に携わる。同社清算後も大手人材紹介会社「パソナ」のタイ現地法人社長を務めるなど複数社で人事・経営に携わる。
2006年、タイ国立マヒドン大学経営大学院にて経営学修士取得後、シンガポールにグッドジョブクリエーションズを設立、2014年に同社売却。
2014年6月、シンガポールに、プロの人事集団「プログレスアジア・シンガポール」を設立。真に東南アジアでビジネスを展開する中小企業をサポートすることを使命に再び起業の道を歩む。